迷走(1)

私がここずっと考えていたのは、工場のあるステーション(=装置群)の前のバッファの容量を制限した場合に、工場全体のWIPにどのような影響があるか、というものです。バッファ容量を制限したことにより工場全体のWIPは減るでしょうか? このようなことを問題にするのは、リトルの法則

から、サイクルタイム(工場にこのジョブが投入されてから完成品として工場を出るまでの時間)を短くするにはWIPを減らす必要があるからです。WIPを減らすために短絡的ですが、WIPが多くたまっているステーションについてそのステーション前のバッファの容量を制限することで無理やりそこのWIPを減らそうとすることが考えられます。
こんなことをすると、そのバッファが満杯の場合には、その前の工程での作業を止める必要があります。するとその前工程を待つWIPが増える可能性があります。感覚的には私には後工程のバッファで容量を制限したことによって減らしたWIPの量がそのまま前工程のWIPに追加されるように思えます。しかし、それは感覚的なものでしかありません。工場全体としてWIPが減るのか、変わらないのか、はたまた増えるのか、考察してみる必要がありそうです。


さて、ここで注意しなければならないのはバッファの容量を制限しない場合と制限する場合で工場全体のWIPを比較する際には、何か条件を付加する必要があるということです。というのは上に示したようにWIPはスループットやサイクルタイムの値の影響を受けるからです。そこで、ここではスループットを同じにするという条件での比較を考えます。
スループット一定の条件で、バッファの容量を制限した場合に、WIPは減るでしょうか? もしそうならばバッファ容量を制限する、という方法が工場全体のWIPを減らすための重要な手法になります。それとも工場全体のWIPは減らないでしょうか? もしそうならばバッファ容量を制限するという方法は工場全体のWIPを減らすのには役に立たないことになります。工場全体のWIPが減らないとしたらWIPは変わらないでしょうか? それとも増えるのでしょうか? もし増えるのであれば、スループットは同じという条件でしたので、工場の状態としてはWIPが増えたことは望ましくないことなので、なるべくステーション前のバッファの容量を制限しないほうがよい、ということになります。


私の結論は、工場全体のWIPは増えるか、変わらない、というものです。少なくとも減りません。ですので、工場全体のWIPを減らす目的でステーション前のバッファを減らすのは得策ではない、ということになります。


私がどのようにしてこのような結論を得たのか、これから述べてみたいと思います。おそらく自分の考えを書いていくうちに矛盾点も見えてきて、それが次の思索を起動することになると思います。しばらく迷走します。