有限容量バッファの挙動の解析(2)

有限容量バッファの挙動の解析(1)」の最後の式

  • \lambda=\frac{a^2+a}{a^2+a+1}\mu_2・・・・(42)

は、2番目の工程の前にバッファがない下図

  • 図9

のような工場のスループットの最大値を表わしています。そのことをはっきり表わすために式(42)の左辺の\lambda\lambda_{\rm{max}1}と書くことにします。つまり

  • \lambda_{\rm{max}1}=\frac{a^2+a}{a^2+a+1}\mu_2・・・・(43)

です。次に、バッファの容量に制限のない下図

  • 図2

のような工場のスループットの最大値を\lambda_{\rm{max}2}で表わすことにします。常識的に考えれば分かることですが、図2の工場の場合、スループットが最大ならば装置Aまたは装置Bのどちらかの稼働率は100%(=1)です。つまり、u_1=1またはu_2=1です。「無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(2)」の式(4)

  • \frac{\lambda}{\mu_1}=u_1・・・・(4)

と式(7)

  • \frac{\lambda}{\mu_2}=u_2・・・・(7)

から、\lambda_{\rm{max}2}=\mu_1または\mu_2になります。稼働率u_1u_2は1を越えてはいけないことから、結局

  • \lambda_{\rm{max}2}=\min(\mu_1,\mu_2)・・・・(44)

となることが分かります。


では、\lambda_{\rm{max}1}\lambda_{\rm{max}2}はどちらが大きいのでしょうか?
式(43)のa

  • a=\frac{\mu_1}{\mu_2}・・・・(34)

(「有限容量バッファの挙動の解析(1)」参照)であり、\mu_1>0\mu_2>0であることから、a>0であることが分かります。よって

  • 0<\frac{a^2+a}{a^2+a+1}<1・・・・(45)

であることが分かります。式(45)と(43)から

  • \lambda_{\rm{max}1}<\mu_2・・・・(46)

となります。次に式(43)と式(34)から

  • \lambda_{\rm{max}1}=\frac{a+1}{a^2+a+1}a\mu_2=\frac{a+1}{a^2+a+1}\frac{\mu_1}{\mu_2}\mu_2

よって

  • \lambda_{\rm{max}1}=\frac{a+1}{a^2+a+1}\mu_1・・・・(47)

a>0から

  • 0<\frac{a+1}{a^2+a+1}<1・・・・(48)

なので

  • \lambda_{\rm{max}1}<\mu_1・・・・(49)

となります。結局\lambda_{\rm{max}1}\mu_1よりも\mu_2よりも小さいので、式(44)から

  • \lambda_{\rm{max}1}<\lambda_{\rm{max}2}・・・・(50)

ということになります。つまり、装置Bの前のバッファをなくすことによって工場のスループットの最大値は悪化する(少なくなる)のです。ここでは証明しませんが一般に、工程間のバッファの容量を制限すると工場のスループットの最大値は悪化します。