「バッチ装置の待ち行列の解析(4)」で平衡方程式
- ・・・・(17)
- ・・・・(18)
- ・・・・(19)
を得ることが出来ました。では、これを解くことを考えます。まず、(17)を(18)の右辺に代入すると
よって
- ・・・・(20)
となります。式(19)でとすると
- ・・・・(21)
となりますが、この右辺に式(20)を代入すると
よって
- ・・・・(22)
となります。どうもこれを繰り返していけば
- ・・・・(23)
が成り立ちそうです。これを数学的帰納法で証明しておきます。
の時に式(23)が成り立つのは、式(20)から明らかです。の時に式(23)が成り立つと仮定して、の時に式(23)が成り立つことを証明します。の時に式(23)が成り立つので
- ・・・・(24)
また、式(19)にを代入すると(この時となるので式(19)を適用出来る)、
- ・・・・(25)
式(25)の右辺に式(24)を代入して
よって
よっての時に式(23)が成り立つことが証明されました。よっての時に式(23)が成り立ちます。
このようにして平衡方程式は
- ・・・・(17)
- ・・・・(23)
と変形されました。これらを解いて各状態の定常状態確率を求めたいですが、解き方がなかなか分かりませんでした。にはもうひとつ満たさなければならない式があります。それは全ての状態確率を足すと1になるというものです。よって次の式も一緒に考慮しなければなりません。
- ・・・・(26)
解き方をいろいろ試行錯誤して最後に思いついたのは、がゼロに近い時には装置はほとんど常に1ジョブで処理するので、定常状態確率の分布はとした場合の稼働率のM/M/1待ち行列とほぼ同じ分布になるのではないか、ということです。稼働率のM/M/1待ち行列の場合、
- ・・・・(27)
となります。そこでこれを式(23)に代入すると左辺は(であることに注意すれば)
- ・・・・(28)
となり、右辺は
- ・・・・(29)
となりますが、が0に近い値なのでは無視してもよいと考えれば式(28)と(29)は等しくなります。逆にが1に近い時には装置はほとんど常に2ジョブで処理するので稼働率のM/M/1待ち行列とほぼ同じ分布いなるのではないか、と考えました。しかし、これはあまり根拠がありません。M/M/1待ち行列と異なるのは、到着は1ジョブずつ発生するのに、処理は2ジョブまとめて行う点です。このようにあまり根拠はないのですが、
- ・・・・(30)
となると仮定してみました。これを式(23)の右辺に代入すると
- ・・・・(31)
となりますが、は1に近いのでと考えれば式(31)は式(23)の右辺に近似的に等しくなります。ここから推測されるのはp(k)とp(k+1)の関係は、がゼロに近い時には(であることに注意すれば)
- ・・・・(32)
が1に近い時には
- ・・・・(33)
ではないかといことです。そこで
- ・・・・(34)
と置いてみました。はあとで求めることにします。の値はがゼロに近い時には2、が1に近い時には1、に近い値になると予想されます。式(34)を式(23)に代入すると
- ・・・・(35)
式(35)はの時は一次方程式、の時は二次方程式になります。式(35)を解くと
- ・・・・(36)
の式は煩雑になったので、以下をそのままにして計算を進めます。
式(34)から
- ・・・・(37)
となります。さらに式(17)を用いれば
- ・・・・(38)
となります。式(26)の左辺に式(38)を代入すると
式(26)によれはこれが1にならなければならないので、
よって
- ・・・・(39)
これを式(38)に代入して
- ・・・・(40)
式(39)と(40)と(36)で定常状態確率の分布を求めることが出来ました。