「バッチ装置の待ち行列の解析(5)」では状態の定常状態確率が
- ・・・・(39)
- ・・・・(40)
- ただし
- ・・・・(36)
というふうに求まりました。これからジョブの平均待ち時間を求めてみます。まず、平均待ち行列長を求め、その次にリトルの法則を用いて平均待ち時間を求めることにします。
状態の待ちジョブ数は、状態0ではゼロであり、の場合個であることを考えれば、平均待ち行列長は、
- ・・・・(41)
で計算出来ることが分かります。これを実行します。式(41)の右辺は
となりますので
- ・・・・(42)
です。式(42)の右辺の中の
は「補足」を参考にすれば
であることが分かるので、式(42)の右辺は
よって
- ・・・・(43)
これで平均待ち行列長を求めることが出来ました。
次にリトルの法則を考えることにします。スループットはですが「バッチ装置の待ち行列の解析(1)」の式(5)
- ・・・・(5)
から
なので、リトルの法則は
- ・・・・(44)
と書けます。ここから
- ・・・・(45)
式(45)に(43)を代入して
- ・・・・(46)
これで
- 装置が空いている時に1ジョブ到着した場合は、1ジョブで処理を開始する。処理が完了した時に1ジョブしか待っていない場合は、1ジョブで処理を開始する。処理が完了した時に2ジョブ以上ある場合は、2ジョブで処理を開始する。
というバッチ構成ルールの時の平均待ち時間を求めることが出来ました。ただし、これはジョブの到着がポアソン到着、装置の処理時間の分布が指数分布の時の式です。
さて、上のバッチ構成ルールをなりゆきバッチルールと名付けることにします。そして、最初に考えた
- ジョブが2つ、そろうまで装置が空いていても処理を開始しない。処理は必ず2ジョブで行う。
というバッチ構成ルールを必ずバッチルールと名付けることにします。今、ポアソン到着、指数分布処理時間の場合について両方のルールにおけるジョブの平均待ち時間が得られたわけです。これをグラフにしてみます。すると以下のようなグラフになります。
「なりゆきバッチルール」は稼働率が小さい時には「必ずバッチルール」よりもジョブの平均待ち時間が少なく、稼働率が大きい時にも「必ずバッチルール」とほぼ同等なジョブの平均待ち時間を達成出来るようです。ただし、これはジョブの到着がポアソン到着、装置の処理時間の分布が指数分布の時の結果なので、他の分布の場合にも同様のことが言えるのかどうか分かりません。