バッチ装置の待ち行列の解析(11)

2ジョブバッチ、「なりゆきバッチルール」の場合の重負荷極限定理

  • \lim_{u\rightar{1}}(1-u)L_q=\frac{c_a^2+2c_e^2}{2}・・・・(82)

を元に2ジョブ、「なりゆきバッチルール」で一般到着間隔分布、一般処理時間分布の場合の平均待ち行列長の近似式を求めたいと思います。通常の、一度に1ジョブだけ処理する装置の待ち行列の表記法(ケンドールの記号)をそのまま流用して、一般到着間隔分布、一般処理時間分布、1台の2ジョブ、「なりゆきバッチルール」装置の場合をGI/G/1と記述し、指数分布の到着間隔分布、指数分布の処理時間分布、1台の2ジョブ、「なりゆきバッチルール」装置の場合をM/M/1と記述することにします。そして一般到着間隔分布、一般処理時間分布の場合の平均待ち行列長をc_ac_euの関数と考え、L_q(GI/G/1;c_a,c_e,u)と表すことにします。すると式(82)は

  • \lim_{u\rightar{1}}(1-u)L_q(GI/G/1;c_e,c_a,u)=\frac{c_a^2+2c_e^2}{2}・・・・(83)

と書き表されます。M/M/1の場合はc_a=1c_e=1なので

  • \lim_{u\rightar{1}}(1-u)L_q(M/M/1:u)=\frac{3}{2}・・・・(84)

となります。実際「バッチ装置の待ち行列の解析(9)」の式(60)で見たようにこれは成り立っています。近似式が従うべき条件として以下の2つを課すことにします。

  • 1) 近似式は重負荷極限定理(式(82))を満足すること。
  • 2) 近似式はc_e=1, c_a=1の時にM/M/1の時のL_qの式
    • L_q(M/M/1;u)=\frac{2au^2}{[1+(2-a)u](1-au)}・・・・(43)
    • と一致すること。

この2つの条件だけでは式の形は決められませんが、一番単純に考えると

  • L_q(GI/G/1:c_a,c_e,u)\approx\frac{c_a^2+2c_e^2}{3}L_q(M/M/1)・・・・(84)

という形を設定すれば、上の2つの条件を満足します。式(84)に(42)を代入して

  • L_q(GI/G/1;c_a,c_e,u)\approx\frac{c_a^2+2c_e^2}{3}\frac{2au^2}{[1+(2-a)u](1-au)}・・・・(85)

となります。これが私が提案する平均待ち行列長の近似式です。ここからリトルの法則を用いれば、

  • CT_q=L_q\frac{t_e}{2u}・・・・(45)

はGI/G/1の場合にも成り立つのでこれを式(85)に代入して

  • CT_q(GI/G/1;c_a,c_e,u,t_e)\approx\frac{c_a^2+2c_e^2}{3}\frac{au}{[1+(2-a)u](1-au)}t_e・・・・(86)

となります。こちらがジョブの平均待ち時間の近似式になります。ただし、

  • a=2  u=0
  • a=\frac{-1+\sqrt{1+8u}}{2u}・・・・(36)

です。このようにして「なりゆきバッチルール」の際のジョブの平均待ち時間の近似式を得ることが出来ましたので、
バッチ装置の待ち行列の解析(1)」で求めた「必ずバッチルール」の時の平均待ち時間の近似式(13)と並べておきます。ただし、「必ずバッチルール」の場合の平均待ち時間をCT_{q1}、「なりゆきバッチルール」の場合の平均待ち時間をCT_{q2}で表わすことにします。

  • 必ずバッチルールの場合
    • CT_{q1}(GI/G/1;c_a,c_e,u,t_e)\approx\frac{t_e}{4u}+\frac{\frac{c_a^2}{2}+c_e^2}{2}\frac{u}{1-u}t_e・・・・(6)
  • なりゆきバッチルールの場合
    • CT_{q2}(GI/G/1;c_a,c_e,u,t_e)\approx\frac{c_a^2+2c_e^2}{3}\frac{au}{[1+(2-a)u](1-au)}t_e・・・・(86)
    • ただし
      • a=2  u=0
      • a=\frac{-1+\sqrt{1+8u}}{2u}・・・・(36)