アレクサンドリア四重奏― 1:ジュスティーヌ

アレクサンドリア四重奏 1 ジュスティーヌ

アレクサンドリア四重奏 1 ジュスティーヌ

読み終わりました。感想は・・・・・読むのがしんどかった。


第1部:失恋男の未練がメランコリックに延々と続くので、最初は共感していたが、だんだんうんざりしてきました。2組のカップルが話の中心です。主人公(名前は出てこない。「ジュスティーヌ」は全編、主人公の回想からなる。)とその妻メリッサ。生活は苦しそう。それから金持ちの銀行家コプト人(キリスト教エジプト人)ネッシムとその妻ジュスティーヌ。ジュスティーヌはユダヤ人。ジュスティーヌが主人公と出来てしまう。ところで主人公はイギリス人。


第2部:ここで、他の人物の描写が入るので、ちょっとほっとする。第1部の調子がもう少し続くと私は読むのがつらい。主人公の精神的上位者と思われる2人、バルタザールとクレアが印象に残る。バルタザールはユダヤ人の神秘主義者で、カバラユダヤの秘教)の研究者。謎めいた警句を吐く。本職は医者。クレアはたぶん主人公より少し年上の画家。静かな生活に自足している。*1他の人物。パースウォーデンは成功した小説家。主人公は小説家を目指しているが今のところまったく成功していないので、パースウォーデンの成功に嫉妬している。彼のいろいろなところが主人公の気に触る。カポディストリア。ギリシア人。女好きで絶倫。


第3部:やっと物語が動き出す感じ。ジュスティーヌと主人公の仲にネッシムが嫉妬する(ように主人公には思われる)。ネッシムは2人を監視しているらしい。しかし表面上は温厚なまま。ネッシムのいくつかの不自然な行動が主人公を不安にさせる。突然、パースウォーデンが自殺する。しかも主人公に遺産の一部を寄贈している。その理由は分からない。主人公が推測するネッシムの心情が、妄想の域にまで膨れ上がる。ネッシムは主人公のことをもっと知ろうとしてメリッサを連れ出して尋問する。配偶者に裏切られた者同士の会話が、突発的な愛に変わる。その後、突然ネッシムは落ち着きを取り戻し、アレクサンドリアの重要人物を鴨狩りに誘う。主人公も招待を受ける。ジュスティーヌはなぜか主人公に対して鴨狩りに参加しないように懇願する。しかし主人公は鴨狩りに参加する。ジュスティーヌと主人公は鴨狩りの別々のグループに分けられた。ジュスティーヌのグループで事件が起きる。カポディストリアが死んだ。事故死なのか判然としない。そしてその事件の直後、ジュスティーヌは失踪してしまう。このあたりのネッシムの動きはかなり怪しい。しかし主人公にはそこが見えていない。


第4部:主人公は上エジプトのカトリック系学校に赴任してアレクサンドリアを離れる。メリッサはそれ以前から病気療養のためにエルサレムに行っていたが、主人公がアレクサンドリアを離れている間にアレクサンドリアに戻ったらしい。メリッサはアレクサンドリアの病院で死ぬ。しかもすでに女の子を産んでいた。このあたりの事情はあまりはっきり描かれていない。女の子はネッシムとの子である。主人公はその子を引き取ってエーゲ海の島に移り住む。そして、今までのいきさつを手記にまとめ、ジュスティーヌという題をつける。


この小説の背景には、常に多様で測りがたい都市アレクサンドリアが控えているのを感じます。

*1:この物語とは関係ないが、クレアという名前は、プルタルコスが自著「エジプト神 イシスとオシリスの伝説について」を献呈した古代ローマの女性クレアを連想させる。「クレア様、分別ある者なら、この世のあらゆるものはみな、神々にお願いをして頂戴すべきものと考えるべきであります。とくに、神々そのものについて知ることなどは、人間にできるかぎりの範囲でですが、どうか知識をお与え下さいとほかならぬ神様がたにお祈りをして頂戴するものなのです。・・・・・」