M/G/1/1待ち行列(3)

次に私が考えたのは、ひょっとしてM/G/1/1の定常状態確率はサービス時間の分布(G)に依存しないのではないか、ということです。もし、それが本当ならば、どうやってそれを証明できるでしょうか?
そこで考えたのは次のようなことでした。まず、到着間隔分布が指数分布なのでPASTAが成り立ちます。ということはジョブが到着した時、M/G/1/1待ち行列にジョブがゼロ個である確率は、定常状態確率と同じp(0)になります。次に、このシステムにジョブが到着するのは単位時間あたり

  • \frac{u}{t_e}

なので、状態0から状態1への遷移が発生する単位時間あたりの回数は

  • \frac{u}{t_e}p(0)・・・・(13)

となります。定常状態では、状態0から状態1への遷移が単位時間あたりに発生する回数の平均は、状態1から状態0への遷移が単位時間あたりに発生する回数の平均と等しくなければなりません。状態0→状態1への遷移が発生してから平均でt_e時間の間に状態1→状態0の遷移が起こることを考慮すれば、状態1から状態0への遷移が単位時間あたりに発生する回数の平均は、

  • p(1)\frac{1}{t_e}・・・・(14)

となります。定常状態では式(13)と(14)が等しくなければなりませんから

  • \frac{u}{t_e}p(0)=p(1)\frac{1}{t_e}

よって

  • up(0)=p(1)・・・・(15)

が成り立ちます。これで、M/G/1/1の時に式(15)が成り立つことが証明出来ました。そして同時に、M/G/1/1の定常状態確率はサービス時間の分布に依存しないことも証明出来ました。このことは、M/G/1/1待ち行列の定常状態確率を計算するにはM/M/1/1待ち行列の定常状態確率を計算すれば充分であることを意味しています。上記の証明では、状態1→状態0への遷移の、単位時間あたりの回数を計算する際に、状態1になってからジョブのサービスが終了するまでの間に(つまりその時間の平均がt_eなのですが)システム内のジョブ数がさらに増えないことがミソになっています。もし、M/G/1/1ではなくてM/G/1待ち行列であれば、ジョブのサービスが終了するまでの間に別のジョブが到着して状態1→状態2の遷移が起こるかもしれません。その場合は、状態1が発生してから平均t_eの間に状態1→状態0の遷移が1回発生するとは言えませんので、式(14)は成り立ちません。


では到着間隔分布がMでなく一般(G)の場合に式(15)は成り立つでしょうか? 残念ながら到着間隔分布が指数分布以外の場合は、PASTAが成り立たないので式(13)が成り立たなくなります。従って、式(15)も成り立ちません。