M/G/s/s待ち行列への考察(2)

では、M/G/s/s待ち行列では定常状態確率分布がサーバのサービス時間分布の形に依存しない、といことが間違いかといいますと、どうもそうではなさそうです。試しにM/E_2/2/2待ち行列について状態遷移図を書いてみると下の図のようになります。

  • 図6


左の図で状態0はジョブの数がゼロの状態、状態1:1はジョブの数が1でサービスのフェーズが1、状態1:2はジョブの数が1でサービスのフェーズが2、状態2:11はジョブの数が2でサービスのフェーズは2つのジョブともに1、状態2:12はジョブの数が2でサービスのフェーズは片方のジョブが1でもう片方のジョブが2、状態2:22はジョブの数が2でサービスのフェーズは2つのジョブともに2、の状態を示しています。遷移の確率は「M/G/1/1待ち行列(2) 」の時と同じように
\frac{1}{t_e}dt
を省略して書いています。全ての遷移について遷移確率が上図のようになるわけを説明するのは煩雑になるのでやめますが、2,3説明しますと、状態2:11→状態2:12の遷移確率が4になっているのは、1つのジョブについてフェーズ1から2への遷移確率は2ですが、この場合フェーズ1のジョブが2つあるので、2×2=4になります。同様に状態2:22→状態1:2の遷移の確率も処理終了になる可能性のジョブが2つあるので2×2=4になります。

この状態遷移図から各状態の定常状態確率を求めるのはちょっと難しそうです。そこでこの遷移図を以下の3つに分解して、それぞれの遷移が平衡していると仮定します。

  • 図7

  • 図8

  • 図9


図7から平衡方程式を作ると

  • 2up(0)=2p(1:1)・・・・(3)
  • 2p(1:1)=2p(1:2)・・・・(4)

となります。ここから

  • up(0)=p(1:1)=p(1:2)・・・・(5)

が導かれます。また、フェーズに関わらずシステム内にジョブが1個ある確率p(1)

  • p(1)=p(1:1)+p(1:2)・・・・(6)

なので、

  • p(1)=2up(0)・・・・(7)

になります。
次に図8から平衡方程式を作ると

  • 2up(1:1)=4p(2:11)・・・・(8)
  • 4p(2:11)=2p(2:12)・・・・(9)

よって

  • p(2:11)=\frac{u}{2}p(1:1)・・・・(10)
  • p(2:12)=up(1:1)・・・・(11)

これらを式(5)と一緒に考えると

  • p(2:11)=\frac{u^2}{2}p(0)・・・・(12)
  • p(2:12)=u^2p(0)・・・・(13)

となります。最後に図9から平衡方程式を作ると

  • 2up(1:2)=2p(2:12)・・・・(14)
  • 2p(2:12)=4p(2:22)・・・・(15)

ところで式(14)の左辺は式(5)から2u^2p(0)となります。一方、式(14)の右辺は式(13)からやはり2u^2p(0)となり、式(14)は自動的に成り立っていることになります。式(15)と(13)から

  • p(2:22)=\frac{u^2}{2}p(0)・・・・(16)

となります。フェーズに関わらずシステム内にジョブが2個ある確率p(2)

  • p(2)=p(2:11)+p(2:12)+p(2:22)・・・・(17)

なので、式(12)(13)(16)より

  • p(2)=2u^2p(0)・・・・(18)

式(7)と並べて書くと

  • p(1)=2up(0)・・・・(7)
  • p(2)=2u^2p(0)・・・・(18)

ところがM/M/2/2待ち行列でも式(7)(18)は成り立ちます。