EDVACに関する第一草稿(First Draft of a Report on the EDVAC) 1.定義 (フォン・ノイマン著)

1.1.

  • 以下の考察は超高速自動デジタル計算システムの構造を、特にその論理的制御を扱う。特定の詳細に進む前に、これらのコンセプトに関する若干の一般的な説明があるのが適切だろう。

1.2.

  • 自動計算システムは、かなりの程度の複雑さを持つ計算を実行するための、たとえば、2個か3個の独立変数を持つ非線形偏微分方程式を数値的に解くための、指示を実行出来る(通常、非常に多くの要素からなる)装置である。
  • この操作を制御する指示は余すところなく詳細までこの装置に与えられなければならない。それらは検討中の問題を解くのに必要な全ての数値情報、従属変数の初期値と境界値、固定パラメータ(定数)の値、問題の陳述の中で起こる固定された関数の表、を含む。これらの指示は装置が識別出来る何らかの形式で与えられなければならない。パンチカードシステムやテレタイプ・テープにパンチしたものや、鉄のテープや針金上の磁気記録や、映画フィルム上の写真記録や、1つ以上の固定のあるいは交換可能なプラグボード上の配線など―このリストは決して終ることはない。これら全ての手続きは検討中の問題の論理的また算術的定義と必要な数値情報(上記参照)を表す若干のコードの使用を必要とする。
  • 一旦これらの指示が装置に与えられると、装置は知的な人間の介入をそれ以上必要とすることなしに完全にそれらを実行出来なければならない。要求される操作の最後に装置は再び上記で参照した形式のうちの1つによって結果を記録しなければならない。結果は数値データである。それらは上記で参照した指示を実行する過程で装置が生成した数値資料の特定の部分である。

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/17/World%27s_First_Computer%2C_the_Electronic_Numerical_Integrator_and_Calculator_%28ENIAC%29.gif
1.3.

  • しかしながら装置が(結果に到達するために)上述の(最終)結果より基本的に多くの数値資料を一般的に生成するということは価値がない。よってその数値アウトプットのわずかの部分だけが1.2に示したように記録されなければならず、その残りは装置の内部を流れるだけで、決して人が分かるようには記録されない。この点はその後、特に{12.4}でより十分な考察を受けるだろう。

1.4.

  • 装置の望まれる自動機能に関する1.2の記述はもちろん、それが失敗なしに機能することを仮定している。しかしいかなる装置の誤動作も常に一定の確率を持っており、複雑な装置と操作の長い連鎖においてはこの確率を無視できるほど小さく保つことは不可能だろう。いかなるエラーも装置の全アウトプットを損なうかもしれない。そのような誤動作を認識し修正するために一般には知的な人間の介入が必要になる。
  • しかしこれらの現象をある程度回避することは可能だろう。装置は最も頻繁な誤動作を自動的に認識し、その存在と位置を外部から見える表示によって示し、それから停止するだろう。ある条件下でそれは必要な修正を自動的に実行し継続しさえするだろう({3.3}参照)。