EDVACに関する第一草稿(First Draft of a Report on the EDVAC) 2.システムの主要下位区分 (フォン・ノイマン著)(1)

2.1.

  • 複雑な装置の機能を分析する際に、特定の分類で区別することはそれら自身をすぐに示唆する。

2.2.

  • 第1:装置はそもそも計算機であるので、それは算術の基本操作を最も頻繁に遂行しなければならないだろう。それらは加算、減算、乗算、除算 +、―、×、÷ である。よって装置が、まさにこれらの操作に特化した器官を含むべきだということは、理にかなっている。
  • しかし、この原則はそれ自体はたぶん妥当であるが、それを実現する特定の方法は厳重な検査を必要とする、ということが見られなければならない。上述の演算子のリスト、+、―、×、÷でさえ、疑いのないものではない。それは、√, ^3√, | |, また、\log_{10}, \log_{2}, \ln, \sinとその逆関数などのような演算子を含むように拡張出来る。それを制限することも、たとえば÷と×さえも除外することも考えられる。より柔軟な設定も考えられる。若干の演算については根本的に異なる手続きが考えられる。たとえば逐次近似法や関数表を用いることである。これらの問題は{10.3, 10.4}で検討される。ともかく装置の中央演算部はたぶん存在しなければならず、これは最初の特殊部分CAを構成する。

2.3.

  • 第2:装置の論理制御はその操作の正しい順序付けのことであるが、それは中央制御組織によって最も効率的に実行されなければならない。もし装置が柔軟であるべきならば、つまりほとんど全ての目的に使用出来るならば、与えられる特定の指示と特定の問題を定義することと、これらの指示が(それが何であれ)実行されるのに配慮する一般制御組織、の間に区別がなされなければならない。前者は何らかの仕方で(それを保存する、1.2で示したような既存の機構で)保存されなければならず、後者は装置の明確な操作部によって表現される。中央制御と言う言葉は後者の機能のみを意味し、それを実行する組織は二番目の特殊部分CCを形成する。

2.4.

  • 第3:長く複雑な一連の操作列(特に計算の列)を実行すべきいかなる装置も多数のメモリを持たなければならない。少なくともその操作の以下の4つのフェーズはメモリを必要とする。
  • (a)
    • 乗算と除算を実行する過程でさえ、中間(部分)結果の列を記憶しなければならない。これは加法と減法でさえ(繰り上げ桁がいくつかの場所で繰り上げられなければならない場合)より少ない程度で当てはまり、√, ^3√,の演算が求められるならば、それらにはより多く当てはまる({10.3, 10.4}参照)。
  • (b)
    • 複雑な問題を制御する指示は多量の材料からなり、コードが状況に依存する場合特にそうである(それは大部分の設定でそうである)。この材料は記憶されなければならない。
  • (c)
    • 多くの問題で特定の関数が必須の役割をはたす。それらは通常、表の形で与えられる。確かに若干の場合これは関数が実験によって与えられるやり方である(例。多くの流体力学の問題における物質の状態の方程式)が、他の場合それらは解析式で与えられる。しかしそれにもかかわらず関数の値を固定の表から得ることは、値が必要な時にはいつでもそれらを(解析的定義に基づいて)新たに計算するより簡単で迅速である。適当な数(100〜200)のエントリのみの表を持ち、補間を用いることは通常便利である。大部分の場合線形補間や二次補間でさえも充分ではないので、三次または四次(あるいはより高次の)補間の標準に頼ることが最善である({10.3}参照)
    • 2.2で述べた関数の若干はこの方法で処理されるだろう。\log_{10}, \log_{2}, \ln, \sinとそれらの逆関数、ことによると√, ^3√もそうである。逆数でさえこのやり方で扱えば、÷を×にすることが出来るだろう。
  • (d)
    • 偏微分方程式において初期条件と境界条件は大規模な数値資料を構成し、それは与えられた問題の初めから終わりまで記憶されなければならない。
  • (e)
    • 変数 で積分される、双曲線型や放物線型の偏微分方程式において、サイクル に属する(中間)結果はサイクル の計算のために記憶されなければならない。この資料は、人間の操作者が装置に入力するのではなく、装置の自動操作の途上で、装置自身が生成する(そして多分次にまた消去され に対応するデータに置き換える)ことを除けば、ほとんどタイプ(d)である。
  • (f)
    • 微分方程式においては(d)と(e)はやはり適用されるが、これらはあまりメモリ容量を必要としない。タイプ(d)のさらなるメモリ要求は、与えられた定数や固定パラメータなどに依存する問題に必要となる。
  • (g)
    • 逐次近似法によって解かれる問題(たとえば、緩和法によって扱われる楕円型偏微分方程式)はタイプ(e)のメモリを要求する。個々の近似の中間結果は、次の中間結果を計算している間、記憶されなければならない。
  • (h)
    • (超高速装置が興味深い機会を提供するところの)ソーティング問題と若干の統計実験は、扱っている資料のためのメモリを必要とする。