デジタルコンピュータに関するウィーナーの勧告についてのメモ

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ウィーナーは、1940年9月20日付の長い覚書で、10年以上前にブッシュに提供していたアイディアをもとに、それを拡張した計算機設計に関する簡潔な方針を5つ立てている。この新しい方針は、現代的な意味で一人前に機能する計算機について、初めてまとまった規定――そしてたぶん、最初の技術仕様――のひとつを定めていた。(中略)
 この覚書についてウィーナーは、ブッシュから礼状を受け取ったが、何週間かして、ブッシュはウィーナーに、この設計の実用性には納得していないという暫定的な意見を書き送った*1。1940年の12月も終わり、ブッシュはウィーナーの案を却下した。


「情報時代の見えないヒーロー ノーバート・ウィーナー伝」フロー・コンウェイ、ジム・シーゲルマン著、松浦俊介・訳 より

情報時代の見えないヒーロー[ノーバート・ウィーナー伝]

情報時代の見えないヒーロー[ノーバート・ウィーナー伝]


そうすると、この覚書は本当にあったんだ。そうであるならば、現代のコンピュータへのウィーナーの寄与は従来考えられていたより大きいことになる。ウィーナーの勧告内容は以下の通り。

(1)

  • 計算機の中心部分である加算と乗算の装置は、ブッシュの微分解析機に用いられたような計量式*2のものではなく、通常の加算器のように計数式*3のものとすること

(2)

  • これらの機構は本質的にはスイッチ操作を行う装置であるけれども、高速に動作させるためには、歯車や機械的継電器*4でなく、電子管で構成する事

(3)

  • ベル電話研究所がもっているある機構に採用された方法にしたがって、加算・乗算などの計算には10進法よりも2進法を用いたほうが経済的であろうということ。

(4)

  • 演算の全過程を計算機の内部に置いて、データが計算機にはいり、計算の最終結果がとりだされるまでのあいだ、人が介入しなくてもよいようにすること。またそのために必要な論理的判断は、計算機が自ら行うこと

(5)

  • 計算機は、データを貯える装置を内蔵すること。この装置はデータを高速度で記録し、抹消すべきときまで確実に保持し、必要なときには高速度でデータをよみとり、あるいは抹消して、直ちに新しいデータを貯えることができるようにすること


ノーバート・ウィーナー「サイバネティックス」より

ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信 (岩波文庫)

ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信 (岩波文庫)

*1:6章の原注(9):ブッシュからノーバート・ウィーナー宛、1940年10月

*2:アナログのこと

*3:デジタルのこと

*4:リレーのこと