マカロック・ピッツのモデル(1)

マカロックとピッツが1943年に「神経活動に内在する観念の論理計算(A Logical Calculus of the Ideas Immanent in Nervous Activity)」で提案したニューロン(=神経細胞)の数学的な動作モデルは、以下のようなものである。

  • 図1

図のようにニューロンn入力、1出力の素子とみなす。入力は0か1のみであり、出力も0か1のみである。i番目の入力線の入力信号をx_i、出力信号をyとする。マカロック・ピッツのモデルでは入力と出力の関係は以下であるとする。

  • y=1\left(\Bigsum_{i=1}^ns_ix_i-h\right)・・・・(1)
  • ただし、1(x)は階段関数で、
    • 1(x)=0   (x<0)
    • 1(x)=1   (x{\ge}0・・・・(2)
  • また、s_iシナプス荷重と呼ばれる定数であり、またhしきい値と呼ばれる定数である。

つまり、\Bigsum_{i=1}^ns_ix_i{\ge}hの時に出力yは1であり、[tex:\Bigsum_{i=1}^ns_ix_i0]であるような入力iでは、そこに1が入力された場合、出力が1になり易いようになり、s_i<0であるような入力iでは、そこに1が入力された場合、出力が0になり易いようになる。


以下、このようなニューロンモデルが論理回路に等価であることを示す。話を簡単にするために1入力のニューロンと2入力のニューロンのみを考察する。まず、1入力のニューロンについて考える。

  • 図2

上の図において、s_1=-2h=1だとすると

  • y=1(-2x_1+1)・・・・(3)

となり、x=0の時にy=1x=1の時にy=0となる。ここで0を偽、1を真と解釈すると、このようなニューロン否定演算子を表していると考えることが出来る。次に、2入力のニューロンについて考える。

  • 図3

上の図において、s_1=s_2=1h=-0.5だとすると

  • y=1(x_1+x_2-0.5)・・・・(4)

となり、x_1x_2yの関係は以下のようになる。

  • 表1

ここで0を偽、1を真と解釈すると、上の表は以下のようになる。

  • 表2

このニューロン「OR」演算子を表していると考えることが出来る。
次に同じ図3において、s_1=s_2=1h=-1.5だとすると

  • y=1(x_1+x_2-1.5)・・・・(5)

となり、x_1x_2yの関係は以下のようになる。

  • 表3

ここで0を偽、1を真と解釈すると、上の表は以下のようになる

  • 表4

このニューロン「AND」演算子を表していると考えることが出来る。よって、このようなニューロンをつなぎ合わせることにより、否定、OR、ANDの任意の組合せを実現することが出来る。