1982年のAIブームの時に読んだ本

先月の1月24日にAI(Artificial Intelligence:人工知能)の立役者の1人だったマービン・ミンスキー博士が亡くなった、というニュースを最近知った。私はマービン・ミンスキーについてそれほど知っているわけではないが、この名前は、1982年(今から34年も前なのか!!)の頃のAIブームを思い出させた。その頃若かった私はブームに影響されて、AIに関するいろいろな本を読んでいた。1982年に日本では通産省のプロジェクトとして、今までのコンピュータとは異なる新しい人工知能用のコンピュータを10年間で開発するプロジェクト「第五世代コンピュータ計画」が始まった。そのことをアメリカの人工知能学者ファイゲンバウムが取り上げて、(日本に負けるな、政府はもっと我々に金を出せ、という意図でもって)本を出版した。これが日本語に翻訳されて、日本でも話題になったことで、研究者以外にもAIについての関心が高まった。そのファイゲンバウムの本

第五世代コンピュータ―日本の挑戦

第五世代コンピュータ―日本の挑戦

  • 作者: エドワード・ファイゲンバウム,パメラ・マコーダック,木村繁,Pamela McCorduck,Edward A. Feigenbaum
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 1983/01
  • メディア: 単行本
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この頃はワクワクしてこの本を読んでいた。結局、この第五世代プロジェクトは失敗してしまうのだが・・・・・。
同じ頃読んだ本
コンピュータは考える―人工知能の歴史と展望

コンピュータは考える―人工知能の歴史と展望

たぶん、この本でマービン・ミンスキーの名前を知ったと思う。これは、この時点までのAI研究の歴史をつづったもので、面白い読み物になっていた。今回(2014年から)のAIブームとは異なり、この頃はプロダクションシステムと呼ばれるルールベース、論理ベースのAIが王道とされていた。今(2016年)とは反対にニューラルネットは時代遅れの試みとされていた。この本には初期のAIの重要人物の名前がいろいろ登場する。ミンスキーもそうだし、シーモア・パパート、経済学でノーベル賞を受賞したハーバート・サイモンジョン・マッカーシー情報理論を建設したクロード・シャノン、それから知識工学を提唱したファイゲンバウム。そういえば、ファイゲンバウムの分厚い本も買った。
人工知能ハンドブック (第III巻)

人工知能ハンドブック (第III巻)

これは1巻から3巻まであった。人工知能の研究を網羅的に説明したもので、網羅的ではあるが体系的ではなかった。これと対照的で、体系的な叙述だったのが、スタンフォード研究所のニルス・ニルソンの「人工知能の原理」だった。
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今思えば、私はこの本からの影響が大きい。
当時、「bit」というコンピュータ・サイエンスの雑誌があり、「新世代プログラミング」という連載で、第五世代の技術的な背景を紹介していた。モンターギュ文法だとかラムダ記法だとかいう用語を思い出す。あれらは今、どこへ行ってしまったんだろう。
それからこんな本も読んでいた。
LISPで学ぶ認知心理学 (1) 学習

LISPで学ぶ認知心理学 (1) 学習

LISPで学ぶ認知心理学 (2) 問題解決

LISPで学ぶ認知心理学 (2) 問題解決

LISPで学ぶ認知心理学 (3) 言語理解

LISPで学ぶ認知心理学 (3) 言語理解

これらはLisp(というプログラミング言語)でのソースコードが載っており、それらは人工知能的な動きをするプログラムだった。
ところで、第五世代プロジェクトのリーダーだった渕一博氏は、2006年に亡くなっている。


ミンスキー博士の訃報をだしにして、昔を思い出したが、これらは今となっては歴史としての意味しかない事柄なんだろうなあ、と思う。・・・・・・34年も前なのか。