このついで

堤中納言物語の中の「このついで」は、中宮の前で女房たちが話をし合っている、というのが枠物語になっていて、その中に3つの物語が入っています。

  • 1番目は、本妻でない女の話。たまにくる夫に幼い子供が珍しがって離れない。夫は行かなければならないところがあるが子供が離れないので、一緒に連れていこうとする。それをさみしがった女が歌を詠んだが、その歌に夫がほろっときて、行くのをやめてしまった、という話。
    • 私にとってはあまり感情移入出来ない話です。
  • 2番目は、何か願い事があって清水寺にお籠もりをした時の体験談。この話の一部を11月10日のエントリで紹介しました。非常に短い話で、紹介した部分で全体の半分ぐらい紹介したことになります。同じようにお籠もりをしている誰かの気配を感じながら、ずっとお勤めをしていたが、いよいよ明日は帰る、という日に、その人がつぶやいた深刻そうな歌に、しみじみと感じ入ったがうまく返歌することが出来なかった、という話。
    • この話が3つの話の中で一番好きです。
  • 3番目は、これも寺での見聞。どうやら身分の高い姫君がお忍びで訪れているような気配。障子に穴を開けて見てみるとまだ若い姫君が法師に「尼になりたい」と言っているらしいのが見える。回りに面倒を見るような人々も仕えていないようで、気の毒に思う。そこで扇に歌を書いて送ったが、先方の姫君の妹君がしたためたと思われる返歌がなみなみならぬ教養を感じさせるので、かえって引け目を感じてしまった、という話。
    • この話の向こう側に進むと、源氏物語のどこかの場面につながりそうに思え、それがおもしろいです。