サイバネティックス 第2章「群と統計力学」から(1)

今までの「エルゴード性とは?(1)」から「エルゴード性とは?(6)」までの考察は、長年(20年ぐらい)私が理解できなかった「サイバネティックス」の第2章「群と統計力学」の記述に何らかの理解の光をあててくれているような気がします。それをこれから考察したいと思うのですが、その準備段階として、私が考察したいと思っている記述を引用しておきたいと思います。

 ふつうのエルゴード定理を述べるには、まず次のような性質をもつ集合Eのことから始めなければならない。すなわち、Eの測度は1とし、かつEは保測変換T、あるいは保測変換T^\lambdaの群によってEそれ自身に変換されるものとする。ただし、-\infty<\lambda<\infty、かつ

 (2.14)   T^\lambda{\times}T^\mu=T^{\lambda+\mu}

とする。
 エルゴード理論では、E上で定義された複素数函数f(x)を考える。どの場合にもf(x)xに関し可測であるとし、また変換の連続群\{T^{\lambda}\}を扱う場合には、f(T^{\lambda}x)x\lambdaについて同時に可測であるとする。
 クープマンとフォン=ノイマンの平均エルゴード定理においては、f(x)L^2に属するものとする。すなわちルベーグ積分の意味で

 (2.15)   \Bigint_E|f(x)|^2dx<\infty

である場合を扱う。
 そのときこの定理は、TまたはT^\lambdaの場合に応じて

 (2.16)   f_N(x)=\frac{1}{N+1}\Bigsum_{n=0}^Nf(T^nx)
あるいは
 (2.17)   f_A(x)=\frac{1}{A}\Bigint_0^Af(T^{\lambda}x)d\lambda

が、N\rightar\inftyまたはA\rightar\inftyに対し、それぞれ

 (2.18)   \lim_{N\rightar\infty}\Bigint_E|f^*(x)-f_N(x)|^2dx=0
 (2.19)   \lim_{A\rightar\infty}\Bigint_E|f^*(x)-f_A(x)|^2dx=0

の意味で、極限函数f^*(x)に平均収束することを主張する。


サイバネティックス」第2章「群と統計力学

古い本なので「関数」を「函数」と書いています。上記引用箇所はノイマンの平均エルゴード定理の紹介です。Eは、今までの「エルゴード性とは?(1)」から「エルゴード性とは?(6)」までの考察の文脈でいくと、「集合平均」の対象になる空間を表します。そして「サイバネティックス」のこのあとの記述を見ると、Eを0から1までの区間と考えればよいようです。

という疑問があるかもしれません。これにはこう考えればよいと思います。

  • 0から1までの区間のなかには無限個の点が含まれている。このそれぞれがサイコロを振るとする。

こう考えれば、Eが「集合平均」の対象となる空間であることが納得出来ます。


サイバネティックス 第2章「群と統計力学」から(2)」に続きます。