「バーコフの個別エルゴード定理」の続きです。まず記述1について考えてみます。
【記述1】
集合を考える。の測度は1とし、かつは保測変換によってそれ自身に変換されるものとする。上で定義された複素数値関数を考える。はに関し可測であるとする。
であるとする。ここで
と定義する。
バーコフの個別エルゴード定理
測度0であるようなの集合を除いては
が存在する。
でした。集合については、記述3に
と出てくるので、これは0から1までの区間と考えればよいと思います。保測変換とは測度を保存する変換です。ここで点は無限の過去から無限の未来にかけて定義される確率過程のある1つの実現値(値というか1つの関数)を表しています。これをと表すことにします。変換は、を時間だけズラした関数を表すような点に点を対応させるような変換です。つまり
となるようなからへの変換です。これが保測変換であるということは、時刻で定義された任意の確率の値が時刻でも同じ値をとる、ということを意味しています。後の点はで表され、後、後・・・・の点は、それぞれ、・・・・で表されます。もう少し数学的に記述すると
であり、
なので
・・・・・・・・・・・・・・
となります。すると、
というのは
となり、
は、時間間隔で測定したの値の(無限)時間平均を表しています。バーコフの定理は測度0であるようなの集合を除いては上記が存在することを主張しています。バーコフの定理の証明には測度論の理解が必要だということだそうです。私は測度論を理解していませんので、定理の証明をだいたいでも示すことが出来ません。それにしても、これが「平均値が存在する」ということを主張する定理だと分かったので、数学的センスの少ない私にはそれが異様に思えます。「えっ! 平均が存在しないことがあるの?」と逆に思ってしまいます。
「バーコフの個別エルゴード定理 記述2」に続きます。