(妄言)アリストテレス

私はアリストテレスにはお会いしたような気がする。海辺で彼が巻貝を取り上げて、その構造がどのように発生するのか考えているのを見たような・・・・。そしてこの妄想を広げていくと、それは彼が40代にさしかかる頃のことで、彼は今まで(20年間も!)属していたプラトン先生の学術団体であるアカデメイアを離れて、エーゲ海に浮かぶ島レスボス島の町ミュティレネにやってきたのだった。彼がアカデメイアを離れた理由は、師プラトンが死んでしまったことであるが、彼が2代目のアカデメイア学頭になれなかったこともある。その時、友人で小アジアのアッソスをその頃支配していたヘルミアスの招きでアッソスに移住し、ヘルミアスの死後は、別の友人テオプラトスの招きでミュティレネに来たのだった。この時期に彼は動物に関する研究を徹底して行なっていた・・・。マケドニア王フィリップスに招かれ、王子アレクサンドロスの家庭教師に就任するのはその後のことだった。
どうもその頃のアリストテレスに会ったことがある、というのが私の妄想です。

だから貴くない動物についての考察を子供みたいに嫌がってはならない。実際、すべての自然的なもののうちには何か驚嘆すべきものがある。・・・・動物どものそれぞれについても、その探求に向かって、すべてのもののうちに何か自然的で美しいものがあると考えて、嫌な顔をせずに、突き進んでゆかなければならない。というのは偶然的にではなくて、或るもののためにあるものが、自然の作品のうちにはある。しかも最も多くある。そしてその作品が成立した、あるいは生じてきたのは、それのためであるところのその目的は美の領域に属しているのである。


山本光雄著「アリストテレス」に引用されたアリストテレス著『動物部分論』より