「プル生産システムのモデル化を目指して(1)」の続きです。整理されていない考察が続きます・・・・。
さて、「(1)」で示した生産ラインにおいてプッシュ方針で運用した場合の利用率とX-Factoerの関係は以下のように計算出来る。
「ジャクソン・ネットワークのサイクルタイム(1)」の式(6)(ここでは式(2)と番号を付け直す)
- ・・・・・・(2)
は、今回考えている生産ラインのような直列のジャクソンネットワークに適用出来る。ただし
である。
今考えている生産ラインでは
-
- 、、、
であり
-
- ・・・・・(4)
なので、式(2)は
ここで「(1)」の式(1)を用いれば
- ・・・・・(5)
これがプッシュ方針の場合の−の関係式である。
しかしプル方針の場合は、外部から生産ラインへのジョブの到着がポアソン過程ではないので、このように計算することが出来ない。プルの場合、生産ライン内のジョブの数が一定であるという特徴がある。これに対し、プッシュの場合は生産ライン内のジョブの数は変動する。それは、「M/n一般ネットワークの場合の積形式の証明(2)」の式(12)(ここでは式(6)と番号を降りなおす)
- ・・・・・・(6)
から明らかである。ここには生産ライン内のジョブの数が一定であるという制限はなく、各ステーションでのジョブの数がいくつであっても、そのようなステーションの状態を持つ全システムの状態の確率は上の式(6)からゼロではない。ということは、システム内のジョブ数がどのような値であっても、それが実現する確率はゼロではないことを示し、つまりはプッシュの場合の生産ラインのWIPは変動していることを示す。
プル方針の生産ラインは閉鎖型待ち行列ネットワークとしてモデル化出来る。つまり、
において右端に見える製品の完成のタイミングで左端の材料のラインへの投入がなされるのであるからジョブが下の図のように
閉鎖型待ち行列ネットワーク内をぐるぐる回るのと等価と考えることが出来る。
この閉鎖型待ち行列ネットワークの−の関係を求めるには平均値解析法というものがあることは知っていた。ORWikiによれば
平均値解析法(mean value analysis (MVA))
- 閉鎖型のジャクソンネットワークなどで平均列長などを系内客数について0から繰り返し計算する方法である.各ノードでの規律が先着順の場合のように, 平均待ち時間は到着時点での平均列長から求まることが肝要であり, 到着定理から,これが系内客数がのネットワークの平均列長と等しくなることと, リトルの公式を利用する.規律が先着順でなくても,平均待ち時間が先着順の場合と一致する規律であればよい.
とある。
この計算方法は分かっているつもりだったが、この前提になっている到着定理がなぜ成立するのか考え出したら分からなくなってしまった。到着定理もORWikiによると
到着定理(arrival theorem)
- 待ち行列ネットワークにおいて,ひとつのノードに到着した客が到着直前に見るネットワーク状態の分布が任意時点の状態分布と一致することを示す定理. 閉鎖型ネットワークの場合には,任意時点の分布として(到着した客を除いたことに相当する)客が1人少ない閉鎖型ネットワークの定常分布を使う.一般に,すべてのノードが準可逆である積形式ネットワークで成立する. PASTA(Poisson arrivals see time averages)のネットワーク版である.
とある。
私が分からないのは
閉鎖型ネットワークの場合には,任意時点の分布として(到着した客を除いたことに相当する)客が1人少ない閉鎖型ネットワークの定常分布を使う.
というところだ。
「プル生産システムのモデル化を目指して(3)」に続きます。