プル生産システムのモデル化を目指して(3)

プル生産システムのモデル化を目指して(2)」の続きです。まだまだ整理されていません・・・・。


ORWikiの到着定理では

PASTA(Poisson arrivals see time averages)のネットワーク版である.

と書かれているが、PASTAポアソン到着でなければ成り立たないはずである。ところが閉鎖型待ち行列ネットワークの各ステーションジョブが到着する仕方はポアソン到着であるという証明がない。これが開放型待ち行列ネットワークであるならば各ステーションジョブが到着する仕方はポアソン到着であることが言えるだろう。
それはまず、外部からラインへのジョブの到着がポアソンであるし、M/M/m待ち行列の出発過程もポアソンになること、さらに、ポアソン過程の合流も分岐もポアソン過程になることから、言える。


本当にそうか?


だから

  • 図1(再掲)

上図のような直列の生産ラインならば、どのステーションについてもそこに到着するジョブの到着過程はポアソン過程になり、PASTAが成立して、

待ち行列ネットワークにおいて,ひとつのノードに到着した客が到着直前に見るネットワーク状態の分布が任意時点の状態分布と一致する

と言うことが出来る。しかし、

  • 図3

のようなループのある開放型待ち行列の場合にも、どのステーションについても、そこに到着するジョブの到着過程はポアソン過程と言うことが出来るだろうか? 例えば上の図でステーション1に入る2つのジョブの流れを見た場合、外部からステーション1に入る流れは仮定からポアソン過程である。しかしステーション4からステーション1に進む流れはポアソン過程かどうか分からない。もしこれもポアソン過程であるとすれば「ポアソン過程の合流はポアソン過程である」からステーション1に入る全体の流れはポアソン過程になり、ステーション1はM/M/m待ち行列になるので、その出発過程もポアソン過程になる。よって、ステーション2への到着過程もポアソン過程になる。するとステーション2はM/M/m待ち行列になるので、その出発過程もポアソン過程になる。これはステーション3への到着過程になり、同様に考えてステーション4への到着過程もポアソン過程になる。そしてステーション4からの出発もポアソン過程になる。ここでジョブがラインの外に出るかあるいはステーション1に戻るかの決定が確率的になされるとすれば、ポアソン過程の分岐もポアソン過程になり、ステーション4からステーション1へ向かう到着過程はポアソン分布になる。しかし、これは循環論法である。


そうすると開放型待ち行列ネットワークでも、各ステーションへの到着過程はポアソン過程だと言えなくなってしまう。すると、開放型待ち行列ネットワークでも到着定理が成立する理由が分からなくなる。


今、こう考えてみて思いついたのだが、図3でステーション4終了後、ジョブがラインの外へ出る確率を徐々に少なくしていって最終的にゼロにすれば、これは閉鎖型待ち行列ネットワークになるのではないか? つまり閉鎖型待ち行列ネットワークは開放型待ち行列ネットワークの極限として考えることが出来るのではないか? だとすれば、ループのある開放型待ち行列ネットワークについて到着定理が成立することを示せば、閉鎖型待ち行列ネットワークについても成立することが言えるだろう。


閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(1)」と「プル生産システムのモデル化を目指して(4)」に続きます。