プル生産システムのモデル化を目指して(8)

プル生産システムのモデル化を目指して(7)」の続きです。


それでは、もし、最後の装置4だけがボトルネックであって、他の3台の装置の処理時間が若干短かったら、プルによるスループット増大の効果はどの程度になるか調べてみましょう。このためには、以下の計算を繰り返し行ないます。(これが平均値解析法です。)

平均値解析法

ステーションiの平均処理時間をt_{ei}とします。
ライン全体のWIPwの時のステーションiサイクルタイムCT_i(w)とし、ステーションiWIPWIP_i(w)とし、利用率u_i(w)とします。
さらにラインのスループット(これは個々のステーションスループットに等しいのですが)をTH(w)とします。また、ライン全体のサイクルタイムCT(w)とします。明らかに、

  • CT(w)=\Bigsum_{i=1}^4CT_i(w)・・・・・(1)

です。


ライン全体のWIPwであるとして、ステーションiジョブが到着した時のWIP到着定理からWIP_i(w-1)。また、利用率u_i(w-1)。よって、今処理中のジョブの数の平均はu_i(w-1)個。よって、今待っているジョブの数の平均はWIP_i(w-1)-u_i(w-1)個。今処理中のジョブが処理を終了するまでにかかる時間の平均は(指数分布の記憶なし特性から)t_{ei}。また、待っているジョブ1個の平均処理時間もt_{ei}。よって、到着したジョブの待ち時間は、

  • (WIP_i(w-1)-u_i(w-1))t_{ei}+u_i(w-1)t_{ei}=WIP_i(w-1)t_{ei}

また、到着したジョブの平均処理時間もt_{ei}だから

  • CT_i(w)=(WIP_i(w-1)+1)t_{ei}・・・・・(2)

となります。式(2)と(1)からCT(w)を求めることが出来ます。CT(w)が分かれば、リトルの法則からスループット

  • TH(w)=\frac{w}{CT(w)}・・・・・(3)

が求まります。このTH(w)を使って個々のステーションリトルの法則を適用すると、個々の
ステーションWIP

  • WIP_i(w)=CT_i(w)TH(w)・・・・・(4)

が求まります。今度はこのWIP_i(w)を用いて式(2)に戻れば、結局WIP_i(w+1)を求めることが出来ます。
最初にWIP_i(0)=0とおいて(1)〜(4)を繰り返し適用していけば、任意のwについてのCT_i(w)CT(w)WIP_i(w)TH(w)を求めることが出来ます。

なお、利用率u_i(w)

  • u_i(w)=TH(w)t_{ei}・・・・・(5)

で求めることが出来ます。また、ライン全体のWIPwの場合の、X-Factoer x(w)

  • x(w)=\frac{CT(w)}{\Bigsum_{i=4}^4t_{ei}}・・・・・(6)

で求めることが出来ます。


t_{e1}=t_{e2}=t_{e3}=0.8t_{e4}=1の時のux関係を以上のようにして求めたグラフを以下に示します。ただし、今回は式(5)にありますように、装置によってuの値が異なりますので、ここではボトルネック・ステーションuで代表させました。

このグラフには比較のためにプッシュの場合のux関係も載せました。


プル生産システムのモデル化を目指して(9)」に続きます。