「プル生産システムのモデル化を目指して(8)」の続きです。
- (ボトルネックのある場合)
このグラフから以下のことが読み取れます。
ボトルネック・ステーションの利用率90%では、プッシュの時のX-Factoerは5.6ですが、プルの場合は3.6に短縮されます(36%減)。また、X-Factoer=5の条件で比較するとプッシュの場合の利用率は89%なのに対してプルの場合の利用率は95%と増えます。これに伴いスループットは89/95=1.07で約7%増加することになります。
ということは、ボトルネックがある場合でも、各ステーションが同等の場合(ボトルネックがない、というか全てのステーションがボトルネックの場合)でも、スループットの増加率はあまり変わらない、ということになります。
- (ボトルネックのない場合)
しかしX-Factoerについてみれば、各ステーションが同等の場合は25%減(改善)だったのが、今回のボトルネックがある場合は36%減になっていて、改善幅がより大きくなっております。さらに、ボトルネックの利用率98%で比較するとプッシュの場合X-Factoerは17.2なのに、プルの場合X-Factoerは6.3と激減しています(63%減)。
この結果から、ボトルネックのはっきりしているラインでボトルネックの利用率が高い場合は、プル方針を採用することによってX-Factoerをかなり削減(改善)することが出来る、つまり、サイクルタイムをかなり短縮することが出来る、ということが言えます。
ということはリトルの法則から考えて、比較的少ないWIPで高いボトルネック利用率を実現出来るということでもあります。このことを見るために、WIPとボトルネック利用率のグラフを作ってみました。
プル方針にしたことにより、少ないWIPで高い利用率を達成していることが読み取れます。一方、ボトルネックがない場合は、
となり、WIPを増やしてもボトルネック利用率はなかなか100%に近づきません。
ボトルネックのない、バランスのとれた工場は扱いづらそうです。
「DBRの効果を示すモデル(1)」に続きます。