DBRの効果を示すモデル(1)

プル生産システムのモデル化を目指して(8)」の続きです。


TOC(Theory Of Constraint:制約理論)におけるDBR(ドラム・バッファ・ロープ)はボトルネック・ステーションが、工場の最初の工程へのジョブ投入をプルする一種のプル方針と考えることが出来ます。
今回、「プル生産システムのモデル化を目指して(8)」によってプルすることの効果を明らかにすることは出来ました。次に調べてみたいのは、プルを引き起こす工程がボトルネック・ステーションであることの効果です。


今度は、「プル生産システムのモデル化を目指して(7)」とはちょっと異なる生産ラインを考えます。生産ラインが4つのステーションを直列に並べたものであり、各々のステーションが1台の装置からなることは「(7)」と同じとします。しかし、今度は3番目のステーションボトルネック・ステーションであるとします。

  • 図1


具体的には「(7)」におけるt_{ei}が以下の値をとるとします。

  • t_{e1}=t_{e2}=t_{e4}=0.8t_{e3}=1

この場合、DBRであれば、ステーション3でのジョブの処理の終了のタイミングでステーション1へジョブを到着させる、という方針で工場を運用することになります。

  • 図2:ケース1(DBR適用時)

ここで以下の2ケースを考えて、ケース1と比較します。

  • 図3:ケース2
  • 図4:ケース3

これらよりケース1のほうが、同じボトルネック利用率の条件で比較してX-Factoerが小さければ、「ボトルネック」でプルするというDBRの優位性がはっきりします。


ケース2については、今までどおり

  • 図5

のような閉鎖型ジャクソンネットワークに置き換えて「平均値解析法」で解析すれば、解析出来ます。しかし、ケース1や3の場合はこのままでは行きません。ケース1の場合、ステーション1から3までだけの挙動であれば

  • 図6

を考えることで解析出来ます。しかしケース4のステーション4の挙動がこれではわかりません。図6におけるステーション3からの出発過程をステーション4に与える必要があります。ステーション3からの出発過程がポアソン過程であると話は簡単なのですが、どうもポアソン過程ではなさそうです。ここで寄り道になりますが、閉鎖型ジャクソンネットワークの、あるステーションからの出発過程について考えてみます。