DBRの効果を示すモデル(2)

DBRの効果を示すモデル(1)」の続きです。


まずはケース2について考えます。

  • 図3:ケース2

これは

  • 図5

のような閉鎖型ジャクソンネットワークに置き換えて平均値解析法で解析すれば、解析出来るのでした。これを実際に行なってみると、その結果は「プル生産システムのモデル化を目指して(8)」の結果

  • 図7

と同じになります。それは図5を考えてみれば分かることで、ネットワークが円環状なので、どの位置にボトルネック・ステーションがあっても同じことになるからです。


次にケース1について考えてみます。

  • 図2:ケース1(DBR適用時)

この4つのステーションのうち、最初の3つのステーションサイクルタイムスループットWIP

  • 図6

を解析することで分かります。問題になるのはステーション4での待ち時間の見積もりです。ステーション3からの出発過程がポアソン過程とは限らないので、M/M/1待ち行列の公式を使うわけにはいかないのです。しかし、私たちの関心がボトルネック・ステーション利用率が95%以上といった高い場合にあるとすれば、ステーション3は大部分の時間を連続してジョブを処理することになるので、ステーション3からの出発過程のばらつきはステーション3の装置の処理時間のばらつきにほぼ等しくなると考えられます。よって、ボトルネック・ステーション利用率が高い場合は、ステーション3からの出発過程、すなわちステーション4への到着過程はポアソン過程であると考えてもそれほど差はないようです。このようにみなして、計算をしてみましょう。


ステーション1、2、3については「プル生産システムのモデル化を目指して(8)」と同様な計算(平均値解析法)でCT,WIP,THを出し、THスループット)からステーション4の利用率u_4を計算します。ここからサイクルタイムCT_4を、M/M/1の公式を用いて

  • CT_4=\frac{1}{1-u_4}t_{e4}

で計算します。最後に全てのステーションサイクルタイムを足してライン全体のサイクルタイムを求め、ここからX-Factoer xを求めます。こうして求めたux関係グラフは以下の通りになります。

  • 図8

ここにはケース2の結果も併せて描きました。両ケースの差は非常に微妙なので、部分を拡大してみました。

  • 図9

するとわずかの差でケース1のほうがよいことが分かりました。しかし、そうなるとケース1の結果を出すのにステーション4への到着分布を近似していることが気になってきます。これほどのわずかの差ですと、近似式の誤差とどちらが大きいかが気になります。


この問題はあとで考えるとして、次にケース3

  • 図4:ケース3

について検討します。今度は、

  • 図10

のようにステーション1とステーション2で閉鎖型ジャクソンネットワークを考えることになります。そしてステーション2からの出発過程をステーション3への到着過程にすることになります。しかし、ステーション2はボトルネック・ステーションではないので、このステーション利用率はそれほど高くはなり得ません。実際、今回の条件

  • t_{e1}=t_{e2}=t_{e4}=0.8t_{e3}=1

ではステーション2の利用率の上限は80%です。この場合、ステーション2からの出発過程を近似的にもポアソン過程であると言うことは難しくなってきます。やはり、まじめに閉鎖型ジャクソンネットワーク内のステーションからの出発過程を解析する必要がありそうです。


閉鎖型ネットワーク内のステーションからの出発過程(1)」「DBRの効果を示すモデル(3)」に続きます。