ここは控えて・・・

何か控えておかなければならない気分。

ネレイデスとトリトンたち

 わたしたちが手に持っているものは、
 皆さんのお気に召すはずです。
 大亀の背に
 おごそかなるものの姿が光り輝いています。
 お連れしたのはカベイロイの神々、
 どうか称えまつる歌をうたって下さいな。

セイレネス

  お姿は小さいけれど、
  お力は大層なもの。
  難破する者をお助けになり、
  大昔から崇められていらっしゃる。

ネレイデスとトリトンたち

 カベイロイの神さま方をお連れしました。
 平和なお祭を祝いましょう。
 この神々がおごそかに支配なさる所では、
 ポセイドンの神もおとなしくなります。

セイレネス

  あなた方の方が私たちより上です。
  船が難破すると、
  あなたがたは抗いがたい力で、
  乗組の人たちをお護りになります。

ネレイデスとトリトンたち

 三人の神をお連れしました。
 四人目の方は来ようとなさいません。
 その神は、自分こそ本当の神で、
 他の三神に代って裁量すると仰せられます。

セイレネス

  一人の神さまが
  別の神さまをお嘲りになるとは。
  けれどもすべての恵みを敬い、
  どんな災難も懼れましょう。

ネレイデスとトリトンたち

 神は本来七柱なのです。

セイレネス

  それでは、あとのお三方は。

ネレイデスとトリトンたち

 それがわかりません。
 オリュンポスへ往って尋ねてみることです。
 あすこには、ひょっとすると
 まだ誰も考えたこともない八柱目の神もいらっしゃるかもしれない。
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ゲーテファウスト高橋義孝訳 より