ジークフリート第3幕冒頭

どうでもいい話ですが、自転車で会社に向かう時、時たま、頭の中で、ワーグナーのニーベルクの指輪の第2夜「ジークフリート」の第3幕の冒頭の音楽が鳴ることがあります。これは若い頃夢中になった(NHKで放映された)1980年のパトリス・シェロー演出、ピエール・ブーレーズ指揮のニーベルンクの指輪です。神々の王ヴォータンを演じたのはドナルト・マッキンタイアーでした。
この緊張感というか憂慮をはらんだ音楽は、自分が会社で重い仕事が予想される時に、脳内で自動的に選曲されたような気がします。
私はこの音楽を自分の頭の中で何百回も演奏していて、この音楽の深みというか立体感を分かっているつもりです。やっぱワーグナーすごいな、と何度も思ったりしました。私の中ではこれぞヴォータン、というか、あるいは北欧神話的にオーディンと呼ぼうか、とにかくあの戦争の神、不気味で測りがたい神を最も的確に表す音楽がこの音楽です。高低のある黒雲の峰を神馬スレイプニルで駆ける神ヴォータン。帽子を目深にかぶって片目を隠した男。


昨晩、この音楽をYouTubeで探しました。そして音楽を聴いたのですが、どうもピンときません。自分の脳内で何百回も演奏していたのはもっと深みのある音楽でした。


ただ、やはりドナルド・マッキンタイアーの渋い表情には惹かれます。こういう中年になれたら、と憧れます。(もう、手遅れですが)


それはさておき、この動画ではこのあと、ヴォータンと、知恵の女神で大地の女神でもある母なるエルダとの対決が続きます。その際にヴォータンが発する「おまえは知っているのか、ヴォータンの意志が!」というセリフ(動画の13:49から13:56まで)は、長年、私の心に妙にひっかかっています。それは、一部には、ちょうど音楽がそこを強調するように出来ているからなのですが・・・・・。母なる女神が示す「運命」(それは神々は滅びる(=神々のたそがれ)という運命なのですが)に対してヴォータンが激しく反発して掲げる「意志」。しかし、このニーベルンクの指輪の世界ではその「意志」の内容が妙にねじれているのです(意志を示す音楽は、はつらつとしているのですが)。その話については、また後日。