狒々について思い出すこと
古代エジプトの神界と狒々の関係について思い出すことは、深層心理学者ユングの自伝に出てくる彼のウガンダでの体験の記述です。
この地方の日の出は、日々新たに私を圧倒する出来事であった。(中略)
私のいる場所の近くに大きな狒々の住む高い懸崖があった。毎朝、狒々たちは懸崖の尾根に、ほとんど身じろぎもせず、太陽に向かって静かに坐った。そのとき以外は一日じゅう、彼らは森のなかを、しきりにがあがあと啼き、金切り声を立てて、やかましく徘徊した。私と同じように、狒々たちも日の出を待っているように思われた。この狒々たちがエジプトにあるアブ・シンベル神殿の大きな狒々のことを、私に想い出させた。その狒々たちは礼拝の姿勢をしていた。彼らはいつも、次のような同じ話を語っていた。昔からわれわれは、天空に輝く光として暗闇から立ち現われ、世界を救済する偉大な神を礼拝していたというのである。
「ユング自伝 2」の「IX 旅」の「iii ケニアとウガンダ」より
- 作者: カール・グスタフ・ユング,アニエラ・ヤッフェ,河合隼雄,藤繩昭,出井淑子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1973/05/11
- メディア: 単行本
- クリック: 6回
- この商品を含むブログ (28件) を見る