ニューラル・コーディング(5)

3.2.2 時間コーディングの応用

時間コーディングの特殊性は、有益で信頼出来る実験でーたを測定するために高度に洗練された技術を必要とする。光遺伝学でなされた進歩は、神経学者たちが個々のニューロンでのスパイクを制御することを可能にし、電気的かつ空間的単一細胞解像度を提供する。例えば、青色光は光受容イオン・チャネルであるチャンネルロドプシンを開き、細胞を脱分極化しスパイクを生成する。青色光が細胞によって感知されない時は、そのチャネルは閉じニューロンはスパイクを停止する。スパイクのパターンは青色光刺激のパターンに一致する。チャネルルドプシン遺伝配列をマウスのDNAに挿入することにより研究者はスパイクを、よってマウスのある種の動作を制御することが出来る(例えば、マウスを左に曲がらせる)。研究者は光遺伝学によってニューロン内の平均発火レートを同じにしたままさまざまな時間コードを生じさせるツールを持ち、それによって特定の神経回路内に時間コーディングが発生しているかどうかをテストすることが出来る。
光遺伝学の技術はいくつかの神経学的あるいは心理学的障害の原因にあるスパイクの異常の修正を可能にする可能性もある。もしニューロンが個々のスパイク・タイミング・パターンで情報を符号化しているならば、平均発火レートだけを見ながらコードを解読しようとすると主要な信号を見逃してしまうだろう。ニューラル・コードの任意の時間符号化の局面の理解とこれらのシーケンスをニューロン内で再現することは、うつ病統合失調症パーキンソン病のような神経学的な障害のより強力な制御と治療を可能にすることだろう。単一細胞内のスパイク間隔の制御は、静脈への薬物の投与より精密に脳の活動を制御する。

3.2.3 発火位相コード

発火位相コードは、スパイク回数コードに振動に基づく時間参照を組み合わせたニューラル・コーディングの方法である。このタイプのコードは個々のスパイクについて、低い、あるいは高い周波数で局所的に進行している振動の位相に基づく時間参照に従った時間ラベルを考慮に入れる。このコードの特徴は、ニューロンが好みのスパイク発生順序を着実に実行することであり、その結果、発火シーケンスをもたらす。
若干の皮膚感覚野は、それらのスパイク回数に関してだけではなく、むしろ進行中のネットワークゆらぎの位相に関係するそれらのスパイク時刻に関して、豊かな自然的刺激を符号化することが示された。振動は局所場の潜在的な信号を反映する。スパイクについて用いられる時間ラベルの粒度は荒いが、それはしばしば時間コードに分類される。つまり、低周波数の振動の位相に関して、この主のコードにある全ての情報内容を表現するには、位相の4つの別々の値で充分である。発火位相コードは、海馬の場所細胞で観察される位相歳差現象に、ゆるく基づいている(ニューロンでの位相初期化も参照のこと)。
位相コードは視覚野で、高周波数振動も伴うことが示された。ガンマ波のサイクル内で個々のニューロンは自分の好む相対発火時間を持つ。その結果ニューロンの集団全体は、その期間が最大約15msにまで達する発火シーケンスを生成する。