第4章 JIT革命 の概要

1970年代と1980年代に、アメリカのMRPとまったく異なるもの、すなわちJIT、が日本において始まっていた。日本のJIT実践に最も緊密に関連した技術は、トヨタかんばん方式である。MRPのようなプッシュ・システムでは、ワークのリリースはスケジュールされる。かんばんのようなプル・システムではリリースは許可される。その違いは、スケジュールは前もって準備されているが、許可は工場の状態に依存しているということである。


しかしJITは単純な手順や技術でない。また、それは首尾一貫した明確な経営戦略でもない。むしろ、それは、総体としてJITと呼ばれた姿勢や哲学、優先事項、方法論の詰め合わせである。


JITを分析することによって以下の洞察を得ることが出来る。

  1. 生産環境はそれ自身一つの制御対象である。
    • セットアップの縮小、製造を念頭においた製品設計の変更、生産計画の平準化、など、を含む戦略は、工場現場で現実になされるどの決定よりも生産工程の効率に、より大きな影響を及ぼす可能性がある。
  2. 運用上の詳細は戦略的に重要である。
    • 生産工程の小さな詳細が多大な競争上の優位を与えるというカーネギーの100年来の洞察を大野たちは補強した。
  3. WIPのコントロールは重要である。 
    • システムによる材料の滑らかで迅速なフローの重要性は、1910年代にフォードによって認識され、1980年代に大野によって強調された。JITの全体の利点は、低いWIP水準の直接の結果であるか、あるいは、低いWIP水準が作る圧力によって拍車がかかるかのいずれかである。
  4. 柔軟性は財産である。 
    • JITは本質的に柔軟性がない。その本質的な形式では、それは安定したレートと、安定した生産のミックスを要求する。しかし、不安定な市場に対応する際にJITは柔軟性を取り込まなくてはならない。そのために、短い段取り時間やキャパシティ・クッション、作業者の多能工化、セルの工場レイアウト、などが必要となる。
  5. 品質優先の重要性
  6. 継続的改善の重要性


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