お金か、ビジョンか(つづき)
お金か、ビジョンかのつづきです。
まだ、ザ・ゴール
- 作者: エリヤフ・ゴールドラット,三本木亮
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2001/05/18
- メディア: ペーパーバック
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の前提である
- 企業の目的は継続的に合法的にお金を儲けること
ということについて考えている。なぜならば、この本で述べられている考え方は全て、上のことを基礎として演繹されているからだ。この本では、お金を儲けることを目的として設定してから、その目的に製造企業(メーカー)がどの程度向かっているかの程度を測る3つの指標を提示する。それらは、スループット、在庫、経費と呼ばれているが、通常の定義とは異なっている。経費はもともとお金にからむ概念だが、ザ・ゴールでは、スループットも在庫もお金として定義されている。
- スループット
- 販売を通じてお金を作り出す割合
- 在庫
- 販売しようとする物を購入するために投資した全てのお金
- 経費
- 在庫をスループットに変えるために費やすお金
そして、スループットが高ければ高いほど、在庫と経費が低ければ低いほど、工場は生産性が高いのだという。ただし、この定義は曖昧だと思う。英語の原文をあたればもっとはっきりするかもしれない。いずれにせよ、これらの指標は「企業の目的は継続的に合法的にお金を儲けること」という前提の上に構築されている。だから、企業の目的が本当に金儲けなのかどうか考えてみたいと思った。
自分がどこかの工場の生産性を上げるためのコンサルティングをしているとしよう。その場合、もし、お金よりビジョンが上であれば、私はその工場の生産性を、お金ではなく、そのビジョンをどれだけ現実化させたかで判断するだろうか?
具体的には次のような例が考えられる。その工場で生産する製品にAとBがあって、Aのほうが1個あたりの利益が大きいのだが、その企業のビジョンは製品Bを世の中に普及させることであったとしよう。工場には生産能力の上限が存在するので1ヶ月あたりに生産出来るAとBの量には限りがある。お金が目的であればAをより多く作る(場合によってはBをまったく作らない)ことが生産性を高めることになるが、ビジョンが目的であれば、Bをより多く作る、そしてAは、会社が存続するに必要なお金を得るのに足りる量だけ作る、というあり方が企業の目的にかなったあり方なのだろう。
さて、Aをより多く作るべきなのだろうか、それともBだろうか? いろいろなケースが考えられそうで、もう少し整理する必要がありそうだ。
なぜ、この企業はBを世の中に普及させたいのだろうか? 今は、需要がないが、将来的にはBとBにまつわる諸々のことに対する需要が予測できる場合があるだろう。日本のどこにもトマトというものがなかった時代にトマトの栽培を開始するような例がそうだろう。この場合、今はトマトの需要がないのだが、将来、トマトの普及によって世の中の食文化が変化していき、きっと大きな需要が起るであろう、というビジョンがあったのかもしれない。こんな時に、目先の利潤だけにとらわれて今、売れているものだけを生産していたら、新しい需要の喚起は出来なくなるだろう。この例はお金よりもビジョンが優先されるべきだ、という根拠になるだろうか? それともこれは、新しい需要に伴うお金が目的ということで、やはりお金が目的と考えるべきなのだろうか?