9.3.3.共用メモリ制約を持つ複数クラス:Quantitative System Performance

9.3.2.独立なメモリ制約を持つ複数クラス」の続きです。(目次はこちら

9.3.3.共用メモリ制約を持つ複数クラス


 アルゴリズム9.2は個々のクラスは他のクラスの動作とは独立なメモリ制約に従うと仮定した。ここで我々はそのアルゴリズムを共用メモリ制約に一般化する。つまり、個々のクラスの個体数におけるのではなくて、メモリ内(あるいはメモリの領域内)の客の総数における制約である。アルゴリズム9.2からの目だった唯一の変更はステップ3.2内の\mu_c(n)の計算の中にある。
 F個のドメインすなわちメモリの共用領域があるとしよう。個々のメモリ制約クラスは1つのドメインに割当てられる。議論を単純にするために全てのドメインが共用されると仮定しよう。専用ドメインは、もちろん共用ドメインの特別な場合である。M_fドメインfのキャパシティ、つまりそのドメイン内に滞在出来る客の数、であるとしよう。(我々は一時的に特定のドメインに割当てられた複数のクラスはメモリ要求量には違いはないと仮定する。)
 我々の方法は数個のクラスによって共用されるドメインを、それぞれ1つのクラスによって使用される数個のより小さなドメインと見なすことである。特定のクラスについてのメモリ制約は、そのコンペチター・クラス、すなわち、FCFSドメイン・スケジューリングの場合は、そのドメインを共用する他の全てのクラス、優先ドメイン・スケジューリングの場合は、ドメインを共用する、優先度が等しいかそれ以上の他の全てのクラス、の平均中核サブシステム個体数を考慮することによって繰り返し決定される。この方法はアルゴリズム9.3に具体化された。その一部はアルゴリズム9.2と類似しているために簡約化されている。
 アルゴリズム9.3は特定のドメインを共用しているクラスがはっきり異なるメモリ要求量を持っているようなモデルを評価するために使用する事が出来る。これはアルゴリズム内で定義された関数M_f\delta_cの単純な修正を要求する。一旦、この方法で修正されると、そのアルゴリズムはメモリ要求量が客で異なるような単一クラス・メモリ制約モデルを評価するのにも用いることが出来る。これは1つのドメインを数個の「人工的な」クラスによって共用された1つのドメインを定義することによって遂行される。これらの人工的クラスの各々は特定のメモリ要求を持つそれらの客に対応する。各々は「現実の」クラスの処理要求時間と同じ処理要求時間と、対応するメモリ要求量を持つ客の個体数を反映するために調整された負荷強度を持つ。

1.

  • c=1,...,\hat{C}について\bar{n}_cの初期見積もりを求める。そのために、元々のCクラス・モデル内の全てのメモリ制約を無視する。その結果得られた分離可能ネットワークを評価する。各々のメモリ制約クラスcについて、\bar{n}_cに非制約モデル内の平均クラスc中核サブシステム個体数と以下のように計算するそのドメイン比例した割当て最小値を設定する。
    • ただしF(c)はクラスcが割当てられたドメインを与える関数であり(M_{F(c)}はよってクラスcが割当てられたドメインのキャパシティである)、\alpha_iは非制約モデル内の平均クラスi中核サブシステム個体数である。

2.

  • 繰返しに向けて、\hat{C}メモリ制約クラスの各々を\bar{n}_cに等しい個体数を持つバッチ・クラスに変更することでモデルを修正する。

3.個々のメモリ制約クラスc=1,...,\hat{C}について

  • 3.1.
    • \bar{n}_c個のクラスc客をクラスcの個々の実現可能な個体数n_cで置き換える。クラスcスループットX_c(n_c)を得るために待ち行列ネットワークを評価する。実現可能な個体数は1から\left[M_{F(c)}-\delta_c\right]までの整数である。ただし
    • 非整数個体数M_{F(c)}-\delta_cでもネットワークを評価する。
  • 3.2.
    • FESC、すなわち待ち行列nの場合のスループット\mu_c(n)が以下で定義される単一クラス負荷依存サービスセンターを作成する。
      • n{\le}M_{F(c)}-\delta_cの場合
        • \mu_c(n)=X_c(n)
      • n>M_{F(c)}-\delta_cの場合
        • \mu_c(n)=X_c(M_{F(c)}-\delta_c)
  • 3.3.
    • このFESCとクラスcの外部環境(NZ、あるいは\lambda)から成る単一クラス分離可能高レベル・モデルを定義し評価する。FESCでの待ち行列長分布を求める。これを用いてクラスcの平均中核サブシステム個体数の新しい見積りを計算する。
      • \bar{n}_c=\Bigsum_{i=1}^{[M_{F(c)}-\delta_c]}iP\left[Q_{FESC}=i\right]+
        • \left[1-\Bigsum_{i=0}^{[M_{F(c)}-\delta_c]}iP\left[Q_{FESC}=i\right]\right](M_{F(c)}-\delta_c)

4.

  • 各々の制約クラスについての\bar{n}_cの連続する見積りが充分近くなるまでステップ3を繰り返す。

5.

アルゴリズム9.3 複数クラス共用メモリ制約


9.4.スワッピング」に続きます。