生産指示かんばんと引き取りかんばん

大野勝久氏のJIT生産システムオペレーションズ・リサーチ――経営の科学 1998年5月号 所収)を読んでいたところ、かんばん方式の概要が載っていて勉強になりました。そこの部分を私の感想を交えてご紹介したいです。これを読むまで私が知らなかったのは、かんばんには2種類、生産指示かんばんと引き取りかんばん、があるということです。

JIT生産システム
(中略)
2.JIT生産システム
(中略)

 部品あるいは製品の収容箱には1枚のかんばんが付けられ、工程内あるいは工程間を巡回し、各工程における生産と前工程からの部品の引取りを制御する。かんばんには大別して、生産指示かんばんと引き取りかんばんの2種類があり、その流れは図1に示されている。すなわち、前工程で生産された部品は収容箱に入れられ、生産指示かんばんを付けられて所定の場所におかれる。後工程がこの部を引き取りに来たとき、生産指示かんばんをはずして、かんばん受取ポストに順に入れ、代わりに持ってきた引取りかんばんをかけて収容箱を持ち帰る。はずされたかんばんは適宜集められ、はずれた順に生産指示かんばんポストにおかれる。

  • 図1 生産指示かんばんと引き取りかんばんの流れ

かんばんが制御するのは2つ

  • 各工程における生産
  • 前工程からの部品の引き取り

です。それぞれが

  • 生産指示かんばん
  • 引き取りかんばん

に対応しています。
上の引用の最後の部分、「はずされたかんばんは適宜集められ、はずれた順に生産指示かんばんポストにおかれる。」の中の「はずされたかんばん」は「はずされた生産指示かんばん」のことです。これらはかんばん受取ポストから「生産指示かんばんポスト」に移動させられます。

前工程はそのかんばんの順に、対応する部品を収容箱の容量(収容数と呼ぶ)だけ生産する。このとき、かんばんはその最初の部品とともに工程を流れる。一方、後工程が前工程からの部品を用いて生産を始める際、収容箱の最初の1個を使用するときに、かけられている引き取りかんばんをはずし、引き取りかんばんポストに入れる。後工程は、あらかじめ定められた時間毎に、あるいは定められた枚数がたまる毎に、空の収容箱と一緒にかんばんを持って前工程へ部品を引き取りに行く。前者を「定期引き取り方式」、後者を「定量引き取り方式」と呼んでいる。

かんばん1個は部品1個と対応しているのではなくて、収容箱1個と対応しています。ということは収容箱の収容数分の部品と対応しています。上の記述から、生産指示かんばんは生産数を制御し、引き取りかんばんは部品引き取り数を制御していることが読み取れます。しかし、生産しなければ次工程は部品を引き取ることが出来ないのですから、生産指示かんばんだけで生産数の制御が出来そうです。実際それは可能で、この論文では、あとで生産指示かんばんだけを用いた方式の数学的なモデルが登場します。

(中略)
かんばんを運用するルールは、
1.

  • 後工程は、前工程へはずれた引き取りかんばん分だけ引き取りに行く

2.

  • 前工程は、生産指示ポスト内のかんばん分だけ、その順番に生産する。

3.

  • 良品だけを生産し、後工程へ不良品を送らない。

4.

  • かんばんは、必ず現物に付けておき、実数と収容数が合わなければならない。

5.

  • かんばんのない時は運ばない、作らない。

6.

  • かんばんの枚数を減らしていく(問題を顕在化させ、絶え間ない改善にむすびつける)。

である。

私は「6.かんばんの枚数を減らしていく(問題を顕在化させ、絶え間ない改善にむすびつける)。」がすごいと思いました。ここがかんばん方式の一番優れたところかもしれません。つまり、絶え間ない改善を強いる環境を簡単にそれも段階を踏んで徐々に提供出来るというところが、かんばん方式の大きな特長でしょう。