場所も消えていく

私は1998年12月から2001年4月まで勤務先が横浜市戸塚駅の近くにありました。戸塚駅の東側です。戸塚駅の西側にはあまり行くことはなかったのですが、そこにはいい雰囲気の商店街があって、それぞれのお店は小さいですが、狭い路地があちこちにつづいていて、自分ではそこが気に入っていました。その当時でさえレトロな雰囲気がしたものです。仕事関係の人たちと何度か飲みに行った記憶もあります。


 この連休に横浜に行ったついでに戸塚へ行ってみました。まずは当時の勤務先を見に行ったのですが、そのまわりも若干変わっていました。しかしびっくりしたのは先ほどお話した商店街です。そこはまったくなくなっており、ビルが建っていました。頭の中の昔の地図と今の風景がどうしても重なりません。まったく別の風景なのです。私は何とか昔と今をつなぐために何か昔の痕跡がないか、探しました。まるで考古学者のように。・・・・・そう、このバスターミナル・・・・これは位置がズレたんじゃあ・・・あそこからは、昔からの町並みだ。でも?・・・・。


 昔からの町並みを発見したのですが、妙に沈んでいます。いえ、活気がない、という意味ではなく、そのあたりの地面が低いのです。やっと、今、自分のいる場所が、地面を高くしていることに気づきました。地面の高さすら以前と変わっていたのです。そうこうしているうちにやっと、昔の町並みのどこがどう再開発の対象になったのか、どのように変わったのか分かってきました。それで少し落ち着いたのですが、改めて思ったのは月並みな言い方ですが、時の流れの恐ろしさです。特に都会では風景が変わる速度が速いのでしょう。10年弱で記憶にあった風景は跡形もなく変わっていました。


 前にTVで、原爆投下前の広島の爆心地付近の町並みをCGで再現するというプロジェクトを紹介しているのを見ましたが、ふとそれを連想しました。「誰かCGであの町並みを保存してくれ〜」と思いました。風景が一変しているところがきっと日本のあちこちにあるのだな、人々の思い出が断ち切られる事態があちこちで進行しているのだな、と思いました。戦争があったわけでもないのに・・・・・。それとも、見えない戦争が進行中なのかな。