14.4.1.CRYSTAL:Quantitative System Performance

14.4.1.CRYSTAL


 CRYSTALは提案するアプリケーション・システムと進展するアプリケーション・システムの性能モデル化を促進するために1970年代終わりに開発されたソフトウェア・パッケージである。
 CRYSTALユーザはシステムを3つの要素、モジュール仕様作業負荷仕様構成仕様で記述する。これらの仕様は相互に関連し、並行に開発される。それらは高レベルシステム記述言語で記述される。

  • モジュール仕様はシステムの個々のソフトウェア・モジュールのCPUとI/Oの要求量を、装置に独立な用語、CPUのパス長やさまざまなファイルへのI/O操作回数、で記述する。
  • 作業負荷仕様は作業負荷のさまざまな要素を特定し、個々の要素にそのタイプ(つまり、トランザクション、バッチ、端末)とその負荷強度とそれが使用するモジュールを与える。
  • 構成仕様はハードウェア・デバイスとファイルの特性を記載する。


これらの仕様から、CRYSTALは待ち行列ネットワーク・モデルの入力を計算する。これらは内部の待ち行列ネットワーク評価アルゴリズムに供給され、このアルゴリズムは性能尺度を計算する。
 我々は、提案するアプリケーション・ソフトウェア・システムをモデル化する際のCRYSTALの使用法を記述することによってCRYSTALの重要な局面の若干を示す。ある保険会社が自分のクレーム処理システムを置き換えつつある。そのアプリケーションをサポートするのに最も費用高価の高い装置構成を決定するために CRYSTALが用いられる。
 最初のステップとして、作業負荷要素が作業負荷仕様に特定される。多くの機能が提案するシステムでは計画されているが、その中の5つがトランザクションの80%以上を占めることになると解析者は判断する。これらは例えばクレーム登録を含んでいる。(この情報は管理レコードから来た。)
 このシステムの計画はその予備段階なので、システムがどのようにモジュールに構造化されるかを確信を持って言うことは出来ない。解析者は最初に5つの作業負荷要素の各々に対応する1つのモジュールを定義することに決心する。この情報は作業負荷とモデルの両方の使用に表現される。(その性質上、これは詳細さの適切なレベルがシステムの知識の進展につれて変化する領域である。)
 個々のモジュールについて、リソース要求量がモジュール仕様の中で記載される。CPU使用の単位は実行された命令数である。アプリケーション・パス長とサポート・システム・パス長の2つの要素がある。この例の場合、現在使用中の類似したモジュールのベンチマークがアプリケーション・パス長についての情報を提供する。ベンチマークが存在しないところでは、見積りを提供するためにソフトウェアの論理フローが用いられる。サポート・システム・パス長については、見積りを提供するために主なシステム・ルーチンが詳細に調査され、若干のベンチマークも実行される。I/O使用の単位は物理I/O操作回数である。解析者は個々のモジュールの論理ビューから始め、使用されるファイルの構造を考慮に入れて、これらを決定する。
 主要なアプリケーション・ファイルとそれらのサイズは構成仕様の一部である。(これらのファイルは、モジュール仕様のI/O要素で参照されるファイルと一致している。) 最初に、単純なファイル構造が提案されるが、最終的にはファイル・インデックスとデータベース・ソフトウェアが導入されることになる。さらに、エントリーのシリーズがシステムのデバイスを記述する。例えば、ディスクについては、その転送レートやシーク時間、回転時間、そのファイルのリストである。
 システム記述が完了した時、CRYSTALは待ち行列ネットワーク・モデルの入力を計算し、性能尺度を得ることが出来る。例えば、ベースラインのトランザクション量とハードウェア構成について応答時間を予測することが出来る。アプリケーションが要求する応答時間要求と比較した時に結果が満足のいくものであるならば、作業負荷仕様内の関係する作業負荷の到着レートを調整することにより、トランザクション量を増加させた場合の予測を得ることが出来る。ハードウェアの選択肢も似たような仕方で調査出来る。
 これはCRYSTALについての我々の記述の結末をつける。このツールを使用する際の主要な活動はモジュール仕様と作業負荷仕様と、構成仕様を完成させることである。ここで記述したスタディはプロジェクトの最初の段階で発生した。以前に記したように、仮にスタディがプロジェクトの生涯に渡って延長されたならば、さらにメリットがあったであろう。よりよいリソース見積りはモジュール実装から利用可能になり、応答時間要求を満足するための構成の能力は周期的に再評価することが出来るだろう。


14.4.2.ADEPT(1)」に続きます。