15.2.コンピュータ通信ネットワーク(1):Quantitative System Performance

15.1. 導入」の続きです。( 目次はこちら

15.2.コンピュータ通信ネットワーク


 コンピュータ通信ネットワークは高いスループットと小さな遅れと安定性を達成するためにさまざまなフロー制御方針を使用している。ここで我々はIBMのSystem Network Architecture(SNA)のフロー制御方針をモデル化する。
 SNAはメッセージをソースから行先まで、一時的にメッセージをバッファする中間ノードの方法で送る。メッセージ・バッファは充分でないリソースである。貧弱なバッファ管理の結果起こるデッドロック枯渇のような問題を回避することを目的としてフロー制御方針はソース/行先の組の間のメッセージのフローを調整する。
 SNAはウィンドウ・フロー制御方針を持っている。主要制御パラメータはウィンドウ・サイズWである。ソースが特定の行先にメッセージ送信を開始する時、ソースでのペーシング・カウントが値Wに初期化される。このペーシング・カウントがゼロになるならば、メッセージの転送は中断される。ウィンドウの最初のメッセージが行先に到達した時、ペーシング応答がソースに戻される。受け取った時に、ソースはページング・カウントの現在の値をWだけ増やす。さらにWメッセージが受信されるたびに行先によってもうひとつのページング応答がソースに送られる。よって任意の時点でソースから行先へ移動中であるメッセージの数の最大値は2W-1である。
 我々の目的は1組のソース/行先の間のメッセージの「応答時間」、つまりメッセージがソースから行先に流れるのに必要な平均時間、をモデル化することである。簡潔さと評価のし易さの点で最も便利なモデルは、あるオープン待ち行列ネットワークである。M個のセンターがあり、それらはソース・ノードと行先ノードとM-2個の中間ノードを表す。(明らかに、Mは中間ノードの数に2を足して決定される。)メッセージを表す客はレート\lambdaでソース・ノードに到着する。それらはノードからノードへ流れ、個々のノードではD単位のサービスを要求する。このモデルは図15.1に示される。

  • 図15.1 SNAフロー制御のオープン・モデル ((c)1982 IEEE


 このモデルについて応答時間は容易に計算出来る。あいにく、モデルはかなり簡略化した仮定をしており、それは結果の適用可能性に影響を与えている。すなわち、フロー制御方針の表現がない!。ソースは受信前のメッセージの数に関係なく、送信し続ける。
 よって、より現実的な方法は、受信前のメッセージの数についての制限を表すことが可能なクローズド・モデルを用いることである。図15.2はこのモデルを示す。受信前の可能なメッセージを表現する2W-1個の客が存在する。オープン・モデルにおけるのと同様に、M個のセンターが存在し、それらがソース・ノード、行先ノード、M-2個の中間ノードに対応する。客はこれらのセンターの各々でサービス要求時間Dを持つ。さらに、1つの「メッセージ生成」と1つの「ページング・ボックス」が存在する。メッセージ生成センターとページング・ボックスは一緒になって、以下のようにしてフロー制御方針を真似る。
 ページング・ボックスはW-1メッセージまで「溜める」。W番目のメッセージが到着する時、それは W個のメッセージ全てのメッセージ生成センターのキューへの放出を引き起こす。メッセージ生成センターはサービス・レート\lambdaを持ち、そのキューが空でない限り、それはこのレートでメッセージ通行量を生成する。少し考えると分かるが、W番目のメッセージのペーシング・ボックスへの到着は行先からのペーシング応答をソースが受信することに対応する。そのような受取にはさらにW個のメッセージを起動する権利がついてくる。

  • 図15.2 SNAフロー制御のクローズド・モデル ((c)1982 IEEE


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