故障と段取りの考慮
「故障と段取りの考慮」での私の説明が分かりづらかったかもしれないので、ここでもう一度、説明を試みてみます。ここでは、装置の処理時間の平均値を表す記号をに、装置の処理時間の変動係数を表す記号をに統一して説明します。
装置の故障と段取り時間を考慮しない場合
まず、装置の故障や段取り時間を考慮せずに、待ち時間を近似的に求めるならば
- ・・・・(1)
で求めることが出来ます。
装置の故障を考慮する場合
装置の故障を考慮した場合の待ち時間は式(1)のを
で置き換えます。ただしはアベイラビリティ(可動率)で
です。また、は装置の故障時間の変動係数です。(補足ですが、故障時間の平均値が(Mean Time To Repair)です。)(もうひとつ補足ですが、故障が修理してから次の故障が発生するまでの時間の分布はここでは指数分布を仮定しています。これまた付け足しですが、故障が修理してから次の故障が発生するまでの時間の平均値が(Mean Time Between Failures)です。)
さらに式(1)のを
に置き換えます。つまり
- ・・・・(2)
になります。ここでは利用率であることに注意して下さい。稼働率ではありません。故障や段取り時間を考えなければ両者は同じ値なのですが、故障や段取り時間を考えると両者は異なる値になります。稼働率と利用率の違いは「利用率」に説明してありますが、
- 利用率=稼働時間/(稼働時間+空き時間)
と考えて下さい。式(2)を使う時、には利用率を入れて下さい。
装置の段取りを考慮する場合
次に、装置の故障を考慮せず、段取り時間を考慮した場合は、式(1)のを
で置き換えます。ただし、 は段取り時間の標準偏差、 は段取りから次の段取りまでに処理されるロット数、 は段取り時間の平均です。さらにを
で置き換えます。ですので
- ・・・・(3)
となります。この時もは利用率と考えなければなりません。たとえば、装置運用時間のうち、10%が段取り時間で、20%が空き時間で、70%が稼働時間の場合、は
- 70/(70+20)=0.77777・・・
になります。
装置の故障と段取りを考慮する場合
最後に、装置の故障と段取りの両方を考慮した場合の待ち時間は、最初に故障のための置き換えをして次にさらに段取りのための置き換えをすることで得られます。つまり式(2)について
- を、 で置き換え
- を、 で置き換えます。
すると
- ・・・・(4)
という大変ややこしい式になります。この時のも利用率です。