EDVACに関する第一草稿(First Draft of a Report on the EDVAC) 2.システムの主要下位区分 (フォン・ノイマン著)(2)

2.5.

  • 第3の記述をまとめる。装置は多量のメモリを必要とする。このメモリのさまざまな部分は、その性質や大きくはその目的によって若干異なる機能を遂行しなければならないように見えるが、それにもかかわらずそれはメモリ全体が1つの組織であるように扱い、その部分が上に列挙したさまざまな機能について 可能な限り取り替え可能であるようにしたくなる。この点は詳細に考慮されることになる。{13.0}参照。
  • いずれにせよメモリ全体は装置の3番目の特殊部分Mを構成する。

2.6.

  • 3つの特殊部分CA,CC(合せてCとする)とMは人間の神経系における連合野に対応する。感覚神経つまり求心性神経と運動神経つまり遠心性神経にあたるものについて検討することが残っている。これらは装置の入力と出力の組織であり、これらを今、手短に考察しよう。
  • 言い換えると:装置の部分CとMの間の数値(や他の)情報の全ての伝達は、これらの部分に含まれる機構によって実行されなければならない。しかし、外部から装置へ元々の情報を得ることや、装置から外部へ最終情報、つまり結果、を得ることの必要性が残っている。
  • 外部という言葉は1.2で述べたタイプの媒体を意味している。そこでは情報は多かれ少なかれ人間の動作によって直接情報が作成可能であり(タイプやパンチング、同じタイプのキーによって生成された光のインパルスを感光すること、若干類似する仕方で金属のテープやワイヤを磁化すること、など)、それは静的に保存可能であり、最終的には多かれ少なかれ人間の器官によって直接感知される。
  • このタイプの若干の特殊な媒体(1.2参照)との間に入力と出力の(感覚と運動の)交流を維持する能力に装置は恵まれていなければならない。この媒体は装置の外部記憶媒体Rと呼ばれることになる。すなわちRを我々は得た。

2.7.

  • 第4: Rから装置の特殊部分CとMへ(数値その他の)情報を伝達するための組織を装置は持たなければならない。これらの組織はその入力、第4の特殊部分Iを形成する。(Iによる)Rからの全ての伝達をMに向かうようにし、決して直接Cに向かわせないことが最善であることはのちに示される({14.1, 15.3}参照)。

2.8.

  • 第5: 装置の特殊部分CとMからRへ(たぶん数値情報のみを)伝達するための組織を装置は持たなければならない。これらの組織はその出力、第5の特殊部分Oを形成する。(Oによる)全ての伝達はMからRにするようにし、決してCから直接にしないようにすることがやはり最善であることはのちに示される({14.1, 15.3}参照)。

2.9.

  • 出力情報はRに向かうものであるが、それはもちろん考慮中の問題についての装置の操作の最終結果を表している。これらはたとえば2.4の(e)〜(g)で検討した中間結果、これらはM内部に留まるのであるが、と区別しなければならない。この時点で重要な疑問がわきあがる。人間の動作と知覚に多かれ少なかれ直接アクセス可能であるというRの性質はさておき、Rはメモリの性質も持っている。確かにそれは、自動装置がさまざまな問題について得た全ての情報の長期保存のための自然な媒体である。ならばなぜ装置内部に別のタイプのメモリMを提供する必要があるのだろうか? Mの全ての、あるいは少なくとも若干の機能(なるべくならば、情報の大部分を含む機能)はRによって引き継ぐことが出来ないのだろうか?
  • 2.4 (a)〜(h)で列挙したようにMの典型的な機能の調査はこれを示している。 (a)(算術演算が実行される間に必要な短期記憶)を装置の外へ、つまりMからRへ移動することは便利だろう。(実際(a)は装置内にあるが、MではなくむしろCAの中にである。12.2の終わりを参照)。既存の全ての装置は、既存の卓上計算機でさえも、現時点でMに等価なものを用いている。しかし(b)(論理的な指示)は外部から、つまりRからIによって識別されるだろうし、(c)(関数表)と(e), (g)(中間結果)についても同じだろう。後者は、装置がそれらを生成する時にOによってRに運ばれ、それらが必要な時にIによってRから検知される。同じことが(d)(初期条件とパラメータ)についてもある程度、そしてたぶん(f)(全微分方程式からの中間結果)についてさえ言える。(h)(ソーティングと統計)については、状況はいくらか曖昧である。多くの場合Mを使用する可能性は物事を決定的に加速するが、Mの使用をより長期のRの使用と適切に混ぜ合わせることが、速度の深刻なロスなく実現可能であり、扱うことが出来る資料の量をかなり増加させるだろう。
  • 確かに既存の全ての(全自動あるいは半自動の)計算装置は(上記に指摘したように(a)を除く)これら全ての目的にRを(ひと塊のパンチカードやテレタイプテープとして)使用している。それにもかかわらず、本当に高速の装置は、2.4 (a)〜(h)に列挙した全ての目的について((e), (g), (h)の場合に若干の制限を持つが)RよりもむしろMに頼ることが出来ない限り、その有用性を非常に制限されているように見えるだろう({12.3}参照)。