エルゴード性とは?(6)

エルゴード性とは?(5)」の続きです。
そこで取り上げたマルコフチェーンの例のエルゴード性を証明するために、こう考えました。

上の2つのグラフにあるように、今の状態が0であろうと1であろうと15回あとの状態は状態0になるのが約1/3、状態1になるのが約2/3の確率分布になります。つまり、15回先の状態の確率は今の状態とほぼ独立になるということを意味します。そこで、15回目と30回目の状態の間もほぼ独立になります。30回目と45回目の間もほぼ独立になります。このように15回間隔で見ていけばほぼ独立な状態の列になります。そこでこれらの時間平均はほぼ

  • \frac{1}{3}\times{0}+\frac{2}{3}\times{1}=\frac{2}{3}

になります。同様に1回目の状態と16回目、31回目・・・・と15回間隔で状態を取り出して時間平均をとれば(0回目の状態と1回目の状態の確率は独立ではないですが、それにもかかわらず)同様にこれらの間ではほぼ独立な状態の列になるのでその時間平均はほぼ

  • \frac{1}{3}\times{0}+\frac{2}{3}\times{1}=\frac{2}{3}

になります。同様なことを3回目、4回目・・・・に適用すればすべて、ほぼ

  • \frac{1}{3}\times{0}+\frac{2}{3}\times{1}=\frac{2}{3}

となり、結局、元の状態の列の時間平均もほぼ2/3になることが分かります。
今回は15回間隔で見ていきましたが、この間隔をどんどん大きくしていけば確率の独立性が高くなるので、時間平均は(ほぼ、ではなくて正確に)2/3になることが分かります。集合平均はもちろん2/3になりますから、このことによって

  • 集合平均=時間平均

が、つまりエルゴード性が証明されました。


ここから分かることは、エルゴード性が成り立つためには、

  • 定常状態確率分布が存在すること

が充分条件だということです。もう少し正確に言えば、

  • 時間によって変化する確率変数X(t)がエルゴード的であるためには、t\rightar\inftyにした時にX(t)の確率分布が、現在の値X(0)に関わらず同一の確率分布に収束すること

ということです。この条件が成立すればマルコフチェーンでなくてもエルゴード性が成り立つのだと、私は納得しました。(厳密に証明出来たのかどうかは大学で数学を専攻していなかったので、自信がありません。)


PASTA(7)」と「サイバネティックス 第2章「群と統計力学」から(1)」に続きます。