仕掛量=期間×アウトプット

このタイトルは「リトルの法則」のことを意味しています。工場での製品の製作期間と単位時間あたりの生産量をかけ合わせると、工場内にある製品の量(=仕掛量)になる、というのがリトルの法則です。
この図では省略していますが、横軸が時間を表しています。時間は左から右へ流れているとしております。いろいろな色の矢印は工場で加工する材料を表しています。
たとえば、加工に2日かかるとします。1日に2つの材料を工場に投入し、1日に2つの製品になって工場から出て行くとします。これが常に起っているとします。そうすると工場の中にある材料の数(仕掛量)は、期間(2日)かけるアウトプット(2個/日)で4個になります。図の中の縦の黒線は、ある時刻を表しています。その黒線を横切る矢印の数を数えると4つになっています。つまりこれが、仕掛が4個、ということを表しています。


これも非常に役立つ図式です。図では期間もアウトプットも一定の場合、すなわち規則的な場合、を描きましたが実際には、期間もアウトプットも変動しても、長期間の平均をとれば

  • 平均仕掛量=平均期間×平均アウトプット

が成り立ちます。どのくらいの期間の平均をとればよいのか、というのは難しい質問です。実務上は感覚的に適当と思われる期間で平均を出し、それを用いて計算することでだいたいの値を求める、という使い方になります。


ちょっと応用例を考えてみましょう。たとえばある工場では、来月から生産量(アウトプット)を1.2倍に上げる計画があるとします。すると、来月においても生産にかかる期間が同じであると予想されるならば、仕掛量も1.2倍になることを覚悟しなければなりません。それだけの材料を置くスペースが工場内に確保できているかどうか、事前チェックしたほうがよいでしょう。
あるいはある工場では、経営層から製品を作るのに要する時間(期間)を今の0.8倍まで短くすることを求められていて、工場としても来期の目標工期(期間)を今までの0.8倍に設定したとします。もし、来期も目標生産量(アウトプット)が従来と同じであれば、仕掛量を今までの0.8倍にする必要があります。つまり、しばらくの間、工場への材料の投入量を減らして、仕掛量が0.8倍になるように調整する必要があります。


これは工場だけでなくいろいろな物事に適用出来ます。例えば、個人の仕事についても言えます。あなたが、何か定型的な仕事を持っているとします。その仕事が1週間に平均3件届くとします。そして、その仕事をあなたが終らせるのに平均2週間かかるとします。すると、あなたは平均2×3=6件の仕事を常に抱えることになるということが分かります。


あるいは、あなたがある有名な行列の出来るラーメン屋に行ったとします。そしてそこにはすでに20名の長さの待ち行列が出来ていたとします。あなたは、並んでいるうちに、だいたい2分に1名の割合で食事を終えた人が店から出てきていることに気づいたとします。すると、20名というのがこの待ち行列における仕掛量になります。待ち行列のアウトプットというのは、おそらく店から出て行く割合に等しいでしょうから、2分に1名、言い換えれば1時間に30名です(アウトプットの数え方としては、単位時間あたり何個、この場合は何名、という数え方が正しいです)。するとあなたが待つ期間は

  • 20名/30名=0.6666時間=40分

になりますね。これも、仕掛量=期間×アウトプット、から導くことが出来ます。もっとも、これは

  • 20名×2分=40分

と計算するほうが自然ですが・・・・。両方の式の意味しているところは同じです。


さて、あなたはやっと店のテーブルに着きました。店のテーブルには全部で10名着席出来るようになっていたとします。すると、またこんな計算が出来ます。

  • 10名×2分=20分

この店では、客が着席してから、食事を終えて店を出るまでに平均20分かかっている、ということが推定出来ます。


このように、仕掛量=期間×アウトプット、という式はいろいろなところに適用できておもしろい式です。