M/M/2の出発過程は何?(1)

M/M/1の出発過程はポアソン過程でした。では、M/M/2の場合はどうなるでしょうか? 同じように考えてみましょう。


今度は装置が2台あるので、場合分けは、2台とも処理中の場合、1台だけが処理中の場合、2台とも空いている場合の3通りとなります。この2台の装置から成るステーションからジョブが出発した瞬間を時刻0とします。この時の装置が、2台とも処理中の場合、1台だけが処理中の場合、2台とも空いている場合、の確率はいくつでしょうか?
M/M/2はM/G/2の一種であるので「M/G/mの定常状態のジョブ数分布について」で述べた

  • ジョブ数の分布(時間平均)」=「到着時のシステムのジョブ数の分布」=「出発時のシステムのジョブ数の分布」

を用いることが出来ます。すると時間平均を求めればよいことが分かります。これは「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(2)」の式(10)を用いれば求めることが出来ます。2台とも空いている確率p(0)

  • p(0)=p_0

となりますが、「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(2)」の式(14)を用いれば

  • p_0=\frac{1}{\frac{(2u)^0}{0!}+\frac{(2u)^1}{1!}+\frac{(2u)^2}{2!(1-u)}}=\frac{1}{1+2u+\frac{4u^2}{2(1-u)}}=\frac{1}{1+2u+\frac{2u^2}{1-u}}
    • =\frac{1-u}{1+2u-u-2u^2+2u^2}=\frac{1-u}{1+u}

よって

  • p(0)=\frac{1-u}{1+u}・・・・・・(1)

となります。次に、1台だけが処理中である確率p(1)は「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(2)」の(10)から

  • p(1)=\frac{(2u)^1}{1!}p_0=\frac{2u(1-u)}{1+u}・・・・・・(2)

であることが分かります。最後に2台とも処理中である確率p({\ge}2)は、1からp(0)p(1)を引いたものになります。

  • p({\ge}2)=1-p(0)-p(1)=\frac{1+u-2u(1-u)-(1-u)}{1+u}=\frac{1+u-2u+2u^2-1+u}{1+u}
    • =\frac{2u^2}{1+u}・・・・・・(3)


次に、このそれぞれの場合において時刻tt+dtの間に次のジョブがこのステーションから出発する確率を求めていきましょう。
まず、時刻0で装置が2台とも処理中だとすると、tt+dtの間にその2台のいずれか1台の処理が終る、すなわちジョブステーションから出発する確率は

  • \frac{2}{t_e}\exp\left(-\frac{2t}{t_e}\right)dt・・・・・・(4)

となります。ただし、t_eは装置の平均処理時間です。


次に、時刻0で1台だけが処理中の場合を考えていきましょう。この時は、処理中の装置が1台だけだからtt+dtの間にその1台の処理が終る、すなわちジョブステーションから出発する確率は

  • \frac{1}{t_e}\exp\left(-\frac{t}{t_e}\right)dt

なるでしょうか? 実はそうはなりません。時刻tになる前にこのステーションに新たにジョブが到着する可能性があります。そうすると、その時点で状態は、2台とも処理中の状態になります。
つまりは、新たにジョブが到着しないまま今処理中のジョブが終了する可能性も
新たにジョブが到着したが、元から処理中だったジョブが先に終了する可能性も
新たにジョブが到着して、そのジョブのほうが先に終了する可能性もあります。
この全ての確率を求めるのにはどうすればよいでしょうか?


時刻0で装置が2台とも空いている場合は、1個のジョブが到着した時点で1台だけが処理中の状態になるので、上の場合と同じような成り行きの場合分けが考えられます。この全ての確率を求めるにはどうすればよいでしょうか?


M/M/2の出発過程は何?(2)」に続きます。