工程間バッファ容量(1)

工場の運用を考える際の一つに、工程間のバッファの容量をどの程度とればよいのか、という問題があります。バッファとは処理前のジョブを待たせる場所です。この問題へのひとつの洞察を与えてくれそうな結果が「プル生産システムのモデル化を目指して(6)」にあります。
プル生産システムのモデル化を目指して(6)」の式(30)をここでは式(1)と番号を振り直して出します。

  • u(w)=\frac{w}{w+N-1}・・・・・(1)

ここで工場のステーションの数Nを2にすると

  • u(w)=\frac{w}{w+1}・・・・・(2)

となります。これは2台の装置が直列に並んでいて、その間に容量w-1のバッファがある場合の、装置利用率の最大値を表している、と考えることが出来ます。ただし、バッファが満杯の時は最初の装置での処理は行わないルールであるとします。

  • 図1

バッファの容量と装置2でジョブの容量(=1)を合わせたものがwであると考えます。そして装置1の前には常にジョブが存在するとします。今、図1の状態で装置1のジョブ(青色の丸)が処理を終了すると、このジョブは工程間のバッファに進みます。そうすると工程間バッファは満杯になりますので、この場合、装置1には新しいジョブが供給されません。

  • 図2

装置2で処理中のジョブが終了して装置2から出て行き、工程間バッファ内の最も古くから待っている(図では右側の)ジョブが装置2に進んだ時点で、装置1に新しいジョブが供給されることになります。
こうすると、装置1、2を含めたシステム全体では常にジョブ数がwになるので、「プル生産システムのモデル化を目指して(6)」で考えた状況に当てはまります(「工程間バッファ容量(2)」参照)。装置1の前には常にジョブが存在していると仮定しているので、式(2)でのu(w)は可能な最大の利用率、いわば、この「装置1−工程間バッファ−装置2」からなるシステムのキャパシティを表していることになります。工程間バッファ容量をC=w-1で表して、式(2)を変形すると

  • u(C)=\frac{C+1}{C+2}・・・・・(3)

となります。これをグラフに表すと次のようになります。

  • 図3

工程間バッファの容量を増やすとシステムのキャパシティが増えて100%に近づく様子が分かります。工程間バッファをあまり小さく設定すると、キャパシティが小さくなって装置を有効に使用できないことが分かります。


しかし、上の例ではあまりにも条件が沢山ありました。つまり、以下の条件です。

  • 前後のステーションの台数は1台に限る
  • 装置の平均処理時間は全て同じ
  • 装置の処理時間は全て指数分布

このような条件をはずしたもっと一般的な場合に、図3と同じようなグラフを求めることが出来れば、実際の工場で工程間バッファの容量を決定するのに役立つ情報になると思いますが、まだ、私にはその求め方が分かりません。今後の宿題です。