ひさびさに、「天火明命(あめのほあかりのみこと)(5)」の続きを書きます。尾張の神話の痕跡を求めて私が調査した内容です。
さて、古事記や日本書紀、さらに先代旧事本紀によれば、天火明命(あめのほあかりのみこと)の息子が天香語山命(あめのかごやまのみこと)でした。今日は天香語山命のことを書こうと思います。先代旧事本紀では天香語山命の神話として、神武東征の際、熊野で毒気にあたって倒れた神武天皇の軍隊を、霊剣フツノミタマを使って毒気を払い、救った、という話を載せています。しかし、これは古事記や日本書紀では高倉下命(たかくらじのみこと)の事跡であって天香語山命の事跡とはされていません。先代旧事本紀は天香語山命の別名を高倉下命としているのですが、私はこれは先代旧事本紀の作り事と考えました。そうすると、天香語山命の神話というのはなくなってしまいます。それでも何かこの神に関する情報を得ることは出来ないでしょうか?
私は「天火明命(あめのほあかりのみこと)(5)」で、天香語山命の鎮座する山をタカクラ山としました。そしてこのタカクラ山を尾張の国の領域内に求め、愛知県春日井市の高座山がそれであるとしました。ところが、仕事の関係で9年前に三重県伊勢市に引っ越してきて気づいたのは、伊勢にもタカクラ山があるということです。こちらは高倉山と書きます。しかも、これは伊勢神宮外宮の敷地内にある山です。それでも私は「おもしろい偶然だなあ」と思っただけでした。さらに、伊勢神宮外宮の神官の家系である渡会氏の祖先の系図に天村雲命(あめのむらくものみこと)が登場するのも、伊勢に来るより前に、山本ひろ子氏の「中世神話」
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を読んで知っていました。それでも私はこの二つを結びつけることに思いが及びませんでした。なぜ、この二つが結びつくのかと言いますと、先代旧事本紀によれば天香語山命の息子が天村雲命だからです。私は、これも単なる偶然だと思っていました。ところが何年かたって、伊勢の図書館で
伊勢神宮とトコヨの古代史―朝廷の力による太陽信仰とトコヨ信仰の変遷
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をパラパラと読んだ時に、天の香具山と伊勢の高倉山が同一緯度に並んでいる、という指摘を見て、「おおっ!」と思いました。しかもこの本ではその事実を、先代旧事本紀で天香語山命の別名を高倉下命としていることに結び付けていました。それを読んで、これは単なる偶然ではないような気がしてきました。尾張氏の祖先であるとされている、天火明命→天香語山命→天村雲命、という系譜は伊勢外宮とも関係があるのでしょうか? 謎は深まります。