待ち時間制約(1)

今度は、「ISSM2011」のエントリで取り上げたQuantify Equipment Capacity Impacts induced by Maximum Waiting Time Constraint through Simulation(最大待ち時間制約がもたらす装置キャパシティへの影響のシミュレーションによる定量化)について、待ち行列理論の立場から検討を加えてみます。

ある加工工程(工程A)から次の加工工程(工程B)までの間に時間制約がある場合があります。この論文では、そのような時間制約が課された場合に、装置のスループットの損失があることを述べています。そして、その損失をシミュレーションによって求め、定量化しています。このデータは時間制約を緩和することによって装置のスループットがどの程度向上するかを予測するものになっています。この問題を待ち行列のモデルで考えてみます。


待ち行列モデルをこの問題に適用するにあたり、私は3つの適用方法を思いつきました。

  • 1番目は、工程Bの装置群の前で待つジョブ数を制限することで、長い待ち時間を防ごうとするものです。待ち行列モデルでは、有限待ち行列長のモデルになります。この時、装置の稼働率は100%よりも小さくなります。ここから装置スループットの損失(正確に言えば装置キャパシティの損失)を論じることが出来そうです。
  • 2番目は、待ち行列長に制限のない、今まで主に考察してきた待ち行列モデルを考えます。そして、この待ち行列に並んだジョブのうち、n番目以降のジョブは時間制約のためにアウトになる、と考えます。そしてアウトになるジョブの数の割合を計算します。この割合が装置スループットの損失であるとみなします。
  • 3番目に考えたのは、やはり待ち行列長に制限のないモデルで、ジョブの待ち時間の分布を直接求める方法です。この分布から、待ち時間制約を破るジョブの割合を計算し、それを装置スループットのロスとみなすものです。

私は、この3番目のやり方を採用しようと思います。ジョブの待ち時間の分布が、どのくらい一般的な待ち行列について求めることが出来るか、今の私には分かりません。まずは、M/M/1待ち行列について、ジョブの待ち時間の分布を求めてみます。