待ち確率の近似式(13)

今年の5月9日の「当面の目標」で目標とした2つの事柄のうちの1つ

  • Whitt教授が提示した待ち確率\Pi(ジョブ到着時にジョブが待たなければならない確率)の近似式よりも簡単で比較的精度のよい近似式(もちろんWhitt教授の提示した近似式よりは精度は落ちるが)を求める。

を「待ち確率の近似式(12)」までで達成することが出来ましたので、ここにきちんと結論を書いておきます。私の提案する近似式は

  • \Pi(GI/G/s)=\frac{b}{2}\left[u^{\sqrt{2(s+1)}-2}+b^{\sqrt{2(s+1)}-2}\right]・・・・(49)
  • ただし
    • b=u+(c_a-2-1)u(1-u)h(u,c_a^2,c_e^2)・・・・(39)
    • c_a{\le}1の時
      • h(u,c_a^2,c_e^2)=\frac{1+c_a^2+uc_e^2}{1+u(c_e^2-1)+u^2(4c_a^2+c_e^2)}・・・・(40)
    • c_a>1の時
      • h(u,c_a^2,c_e^2)=\frac{4u}{c_a^2+u^2(4c_a^2+c_e^2)}・・・・(41)
  • また
    • uは装置の稼働率
    • c_aはジョブの到着間隔の変動係数
    • c_eは装置の処理時間の変動係数

です。


特に待ち行列M/G/sの場合は、c_a=1であるので上の近似式は、まず式(39)から

  • b=u・・・・(47)

となるので

  • \Pi(M/G/s)=\frac{u}{2}\left[2u^{\sqrt{2(s+1)}-2}\right]
  • \Pi(M/G/s)=u^{\sqrt{2(s+1)}-1}・・・・(46)

となります。これは以前私が「M/M/mにおける待ち確率Πの近似」の式(10)でM/M/s待ち行列について求めた近似式に一致します。私はそこではM/M/s待ち行列の平均待ち行列L_qについての逆瀬川の近似式からこの式を導き出しました。「M/M/mにおける待ち確率Πの近似」の式(10)はM/G/sではなくM/M/sについての近似式ですが、

  • \Pi(M/G/s)\approx\Pi(M/M/s)

なので近似式として式(46)が成り立ちます。


また、s=1の場合は式(49)の近似式は

  • \Pi(GI/G/1)=\frac{b}{2}\left[u^{\sqrt{4}-2}+b^{\sqrt{4}-2}\right]=\frac{b}{2}[u^0+b^0]
    • =\frac{b}{2}\times{2}=b

となりますが、bは式(39)(40)(41)で与えられるので、これは「待ち行列システムGI/G/1における待ちについての近似公式(1)」〜「(8)」で紹介したW. KraemerとM. Langenbach-Belzの近似式に一致します。