ボトルネックの重要性

今日はその部分を引用します。

「まずは、NCX−10(CUSCUS注:ザ・ゴールに出て来る工場の装置の一つ。これはボトルネックである、ということになっている)の1時間当たりのコストは、いくらかわかっているのかね」
「それは、正確にわかっています。1時間32ドル50セントです」ルーが自信ありげに答えた。
「熱処理は(CUSCUS注:これもボトルネックということになっている)」
「1時間21ドルです」
「両方とも間違っている」ルーの答えを聞いてジョナが言った。
「しかし、「コスト・データによると・・・・」
「データが間違っているんだよ。君が計算間違いをしたからではなく、ワークセンターごとにコストを計算しているからだ。(中略)計算の根拠となる仮定が、ほとんどの場合間違っていた」
ジョナはポケットから葉巻を取り出し、マッチで火をつけた。
「この工場も同じだ」ジョナは葉巻をふかしながら言った。「この2つのワークセンターのコストは、標準的な会計方法を使って計算している・・・・しかし、そのワークセンターが、ボトルネックであることは少しも考慮されていない」
「考慮すると、コストが変わるのですか」ルーが訊ねた。
ボトルネックがある場合、工場の能力はボトルネックの能力に等しいことはもうわかってくれたと思う。つまり『ボトルネックの1時間当たりの生産能力イコール工場の1時間当たりの生産能力』となるわけだ。だから、ボトルネックで1時間、時間を無駄にすれば、工場全体で1時間無駄にしたことと同じことになる」
「なるほど」ルーが相槌を打った。
「それなら、この工場の操業を1時間停止させたとしたら、いくらコストがかかると思うかね」
「はっきりとは言えませんが、かなりの金額になると思います」ルーが答えた。
「教えてくれないか。この工場の1ヶ月当たりの操業コストはいくらかね」
「1ヶ月操業するのに、合計約160万ドルかかります」再びルーが答えた。
「それでは、NCX−10を例にとって考えてみよう。NCX−10の1ヶ月当たりの運転可能時間は何時間だと言ったかね」
「約585時間です」ラルフが答えた。
ボトルネックの実際のコストは、工場全体の総費用をボトルネックの総運転可能時間で割って求めることができる。いくらになるかね」
 ルーがコートのポケットから電卓を取り出し、計算を始めた。「2735ドルです」ルーが答えた。「しかし、ちょっと待ってください。本当にこれで正しいのですか」
「ああ、間違いない。ボトルネックが動いていないときのコストは、32ドルや21ドルではない。本当のコストは、工場全体の1時間当たりのコスト、つまり2700ドルになる」
 ルーは、唖然としている。

TOCの考え方の根本がここに現れています。ボトルネックを最重要視する考え方です。この主張から分かることは、通常の、装置固定費を製品コストに付加する原価計算方法で、装置の効率を考えると工場全体の生産性に悪影響を与えるということです。