もう少し複雑な待ち行列ネットワークの解析(1)

先行エントリ:分岐型待ち行列の解析


今まで、

で単純な待ち行列ネットワークについて状態確率が積形式解になることを確かめてきました。今度は、下図のような

  • 図1

もう少し複雑な待ち行列ネットワークについて積形式解が成り立つかどうかを調べることにします。この図は実は、下図のような2回ループを回るような工程を想定して作ったものです。

  • 図2

図2では装置2終了後のロットの行先は確定的(1回目は装置3に進み、2回目は装置4に進み、3回目はシステムの外に出る)です。しかし今のところは装置2終了後のロットの行先の分岐を確率的に考えなければ積形式解を導くことが出来ないので図1では装置2終了後のロットの行先はそれぞれ1/3の確率で装置3、装置4、システム外、が選ばれるものとします。この待ち行列ネットワークに課される諸条件は以下のものです。

  • 装置1へのロットの到着間隔は指数分布である。
  • 全ての装置の処理時間は指数分布である。
  • 装置2からの行先は確率的に(1/3ずつの確率で)選択される。

装置1の平均処理時間をt_{e1}、装置2の平均処理時間をt_{e2}、装置3の平均処理時間をt_{e3}、装置4の平均処理時間をt_{e4}とします。さらに、装置1の利用率u_1、装置2の利用率u_2、装置3の利用率u_3、装置4の利用率u_4とします。また、装置1でのスループット\theta_1、装置2でのスループット\theta_2、装置3でのスループット\theta_3、装置4でのスループット\theta_4とします。図1の装置2と装置3と装置4の関係に注目すれば

  • \theta_3=\theta_4=\frac{1}{3}\theta_2・・・・・・(1)

であることが明らかです。また、装置1と装置2の関係に注目すれば

  • \theta_1=\theta_2・・・・・・(2)

であることは明らかです。装置1へ外部から入ってくるロットの流量を\lambda_1で表すと、装置1に注目すれば

  • \lambda_1+\theta_3+\theta_4=\theta_1・・・・・・(3)

よって、式(3)に式(1)と式(2)を入力すれば

  • \lambda_1+\frac{1}{3}\theta_2+\frac{1}{3}\theta_2=\theta_2
  • \lambda_1=\frac{1}{3}\theta_2
  • \theta_2=3\lambda_1・・・・・・(4)

式(4)と式(2)から

  • \theta_1=3\lambda_1・・・・・・(5)

式(4)と式(1)から

  • \theta_3=\lambda_1・・・・・・(6)
  • \theta_4=\lambda_1・・・・・・(7)

これらは、図1の流量設定の元になったのが図2ですから、図2を見れば明らかなことです。もちろん

  • \theta_1=\frac{u_1}{t_{e1}・・・・・・(8)
  • \theta_2=\frac{u_2}{t_{e2}・・・・・・(9)
  • \theta_3=\frac{u_3}{t_{e3}・・・・・・(10)
  • \theta_4=\frac{u_4}{t_{e4}・・・・・・(11)

が成り立ちます。
もう少し複雑な待ち行列ネットワークの解析(2)」に続きます。