「サイバネティックス」という本の「第3章 時系列、情報および通信」(12)

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このようにいろいろ分からない点がありますが、どうやらf(t+A,\gamma)を予測するにはf(t,\gamma)線形演算子をほどこせばよいようです。それではこの演算子はどのように求められるのでしょうか? その答が前回も引用した(3.88)

(3.88)   A(\omega)=\lim_{n\rightar\infty}(2\pi)^{3/2}q_n(-\omega)k_A(\omega)
      =k_A(\omega)/k(\omega)
      =\frac{1}{2\pi{k}(\omega)}\Bigint_{A}^{\infty}e^{-i\omega(t-A)}dt\Bigint_{-\infty}^{\infty}k(u)e^{iut}du

を得る。これは最良予測の演算子を周波数の形で表わしたものである。

のようです。(3.88)に登場するA(\omega)は、以下の意味合いを持ちます。


予測の演算子F\{f(t,\gamma)\}で表わします。すなわち

  • F\{f(t,\gamma)\}=\lim_{n\rightar\infty}\Bigint_{-t}^{\infty}K(t+A+\tau)d\tau\Bigint_{-\tau}^{\infty}Q_n(\tau+\sigma)f(\sigma,\gamma)d\sigma・・・・・(28)

とします。この演算子f(t,\gamma)の代わりにe^{i\omega{t}}を入力すると、これは線形演算子の性質なのですが、入力に比例した出力の関数を得ることになります。その入力と出力の比がF\{f(t,\gamma)\}です。すなわち

  • F\{e^{i\omega{t}}\}=A(\omega)e^{i\omega{t}}・・・・・(29)

です。この比例係数A(\omega)\omegaの関数です。e^{i\omega{t}}は本質的に正弦波であり\omegaはその角周波数です。よってA(\omega)は予測の線形演算子周波数特性を表したものと考えることが出来ます。つまり、A(\omega)の周波数特性を持つような線形演算子を求めればそれによって予測が出来ますし、電気回路で考えればA(\omega)の周波数特性を持つような回路を製作すれば、その回路にf(t,\gamma)を入力すると出力にf(t+A,\gamma)の最適予測値が現れることになります。(3.88)の最左辺と最右辺だけを取り出して書き直してみます。

  • A(\omega)=\frac{1}{2\pi{k}(\omega)}\Bigint_{A}^{\infty}e^{-i\omega(t-A)}dt\Bigint_{-\infty}^{\infty}k(u)e^{iut}du・・・・・(30)

この式の右辺を見ますと、k(\omega)が分かればA(\omega)を計算することが出来ます。ではk(\omega)は何かと思って前のほうを読んでいくと、これがK(t)フーリエ変換であることが分かります。

 フーリエ変換を使って、

(3.68)   K(s)=\Bigint_{-\infty}^{\infty}k(\omega)e^{i\omega{t}}d\omega

とおこう。K(s)がわかればk(\omega)がわかるし、逆にk(\omega)がわかればK(s)がわかる。

そこでK(t)がわかればk(\omega)を求めることが出来ることが分かります。しかしK(t)はどうやって求めるのでしょうか? 観測者が知っているのは

  • f(t,\gamma)=\Bigint_{-t}^{\infty}K(t+\tau)d\xi(\tau,\gamma)・・・・・(26)

の現在、つまり時刻t、までの値だけです。ここからK(t)を求める必要があります。私にはこの求め方が分かりません。これから考えてみます。


まず、「「サイバネティックス」という本の「第3章 時系列、情報および通信」(9)」の式(24)

  • \Bigint_0^1\Psi\{f(t,\gamma)\}d\gamma=\lim_{T\rightar\infty}\frac{1}{T}\Bigint_{-T}^0\Psi\{f(t,\gamma)\}dt・・・・・(24)

で示したエルゴード定理を利用します。ここで\Psi\{.\}は任意の汎関数でした。式(24)から

  • \Bigint_0^1f(t,\gamma)f(t+\tau,\gamma)d\gamma=\lim_{T\rightar\infty}\frac{1}{T}\Bigint_{-T}^0f(t,\gamma)f(t+\tau,\gamma)dt・・・・・(29)

また、第3章にはこのような式もあります。

(3.32)   \Bigint_0^1d\gamma\Bigint_{-\infty}^{\infty}K(t+\tau_1)d\xi(t,\gamma)\Bigint_{-\infty}^{\infty}K(t+\tau_2)d\xi(t,\gamma)
     =\Bigint_{-\infty}^{\infty}K(s)K(s+\tau_2-\tau_1)ds

ここで「(11)」の

  • t<0の時、K(t)=0・・・・・(27)

という条件を考慮すれば(3.32)は

  • \Bigint_0^1d\gamma\Bigint_{-\tau_1}^{\infty}K(t+\tau_1)d\xi(t,\gamma)\Bigint_{-\tau_2}^{\infty}K(t+\tau_2)d\xi(t,\gamma)=\Bigint_{-\infty}^{\infty}K(s)K(s+\tau_2-\tau_1)ds・・・・・(30)

と書き直すことが出来ます。さらに(26)を考慮すると

  • \Bigint_0^1f(\tau_1,\gamma)f(\tau_2,\gamma)d{\gamma}=\Bigint_{-\infty}^{\infty}K(s)K(s+\tau_2-\tau_1)ds・・・・・(31)

(31)で\tau_1=t\tau_2=t+\tauと置くと

  • \Bigint_0^1f(t,\gamma)f(t+\tau,\gamma)d{\gamma}=\Bigint_{-\infty}^{\infty}K(s)K(s+\tau)ds・・・・・(32)

これを(29)に代入すると

  • \Bigint_{-\infty}^{\infty}K(s)K(s+\tau)ds=\lim_{T\rightar\infty}\frac{1}{T}\Bigint_{-T}^0f(t,\gamma)f(t+\tau,\gamma)dt・・・・・(33)

さらに、証明は示されていませんが

(3.69)   \frac{1}{2\pi}\Bigint_{-\infty}^{\infty}K(s)K(s+\tau)ds=\Bigint_{-\infty}^{\infty}k(\omega)k(-\omega)e^{i\omega{\tau}}d\omega

とありますので、結局

  • \Bigint_{-\infty}^{\infty}k(\omega)k(-\omega)e^{i\omega{\tau}}d\omega=\frac{1}{2\pi}\lim_{T\rightar\infty}\frac{1}{T}\Bigint_{-T}^0f(t,\gamma)f(t+\tau,\gamma)dt・・・・・(34)

となります。私の想像では、ここからk(\omega)を求めることが出来るのではないか、と見当をつけているのですが、ここからどう進めたらよいか分かりません。もう少しフーリエ変換を勉強する必要がありそうです。


時系列の予測については、こなれていませんが、ここまでにします。


「サイバネティックス」という本の「第3章 時系列、情報および通信」(13)」に続きます。