M/G/s/nの定常状態のジョブ数分布について

M/G/mの定常状態のジョブ数分布について」で述べたことをジョブ数の上限がある待ち行列の場合に拡張します。到着間隔が指数分布なので、PASTAが適用出来、定常状態では

  • 「ジョブ数の分布(時間平均)」=「到着時のシステムのジョブ数の分布」

になるのはジョブ数に上限がない場合(M/G/sの場合)と同じになります。到着時の場合(上の式の右辺)は、到着するジョブ自身はシステム内のジョブ数に数えないことにします。


次に、ジョブがシステムから出て行く出発時のシステム内のジョブ数の分布を考えます。ただし、この時は出発するジョブ自身はシステム内のジョブ数に数えないことにします。

  • 図1


ところで出発時にシステム内のジョブ数がk+1kに変化したとすれば、定常状態である限り、それ以前のどこかの時点でジョブ到着によりシステム内のジョブ数がkk+1に増加したことがあったはずです。しかも、k+1kの過程とkk+1の過程は対になっているはずです。そうでなければ定常状態になりません。とすれば、あるジョブの到着時点で、システム内のジョブ数がkであったとすれば、それに対になったジョブの出発時点でシステム内のジョブ数がkであるはずです。
ただし、ジョブの到着時点でシステム内のジョブ数がsであった場合には、sはジョブ数の上限なのでss+1の遷移はありません。よってこれに対応するs+1sの遷移も存在しません。ということは、ジョブの到着時点でシステム内のジョブ数がsであった場合にはそれに対応する、ジョブの出発は存在しない、ということです。つまり、ジョブの出発回数はジョブの到着回数より少ない、ということです。


このように考えれば、

  • 「到着時のシステムのジョブ数の分布」=「出発時のシステムのジョブ数の分布」

にはなりえません。ジョブの到着時点でシステム内のジョブ数kが[tex:k条件付き確率が出発時のシステムのジョブ数の確率に等しいことになります。この条件付き確率とは、ジョブ到着時点でシステム内のジョブ数がsである場合を除いた確率なので、PASTAを考慮すると、元の分布の確率を1-p(s)で割ったものになります。よってジョブ数がs未満の場合、

  • 「ジョブ数の確率(時間平均)」=「到着時のシステムのジョブ数の確率」=「出発時のシステムのジョブ数の確率」\times(1-p(s))

が成り立つことになります。ジョブ数がsの時には

  • 「ジョブ数の確率(時間平均)」=「到着時のシステムのジョブ数の確率」

は成り立ちますが、それに対応する「出発時のシステムのジョブ数の確率」は定義出来ません。