M/G/1/2待ち行列(5)

M/G/1/2待ち行列(4)」で求めたM/G/1/2待ち行列の定常状態確率分布の近似式

  • c_e=0の時
    • p(0)=\frac{e^{-u}}{e^{-u}+u}・・・・(40)
    • p(1)=\frac{1-e^{-u}}{e^{-u}+u}・・・・(41)
    • p(2)=1-\frac{1}{e^{-u}+u}・・・・(42)
  • c_e>0の時
    • p(0)=\frac{1}{1+u(c_e^2u+1)^{1/c_e^2}}・・・・(43)
    • p(1)=\frac{(c_e^2u+1)^{1/c_e^2}-1}{1+u(c_e^2u+1)^{1/c_e^2}}・・・・(44)
    • p(2)=1-\frac{(c_e^2u+1)^{1/c_e^2}}{1+u(c_e^2u+1)^{1/c_e^2}}・・・・(45)

を求める際に、サービス時間の分布g(t)を用いて

  • A=\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{t}{t_a}\right)g(t)dt・・・・(16)

を計算して求めなくてもサービス時間の変動係数c_eを求めるだけで定常状態確率分布が大体分かるとした仮定はどの程度妥当なのでしょう? 今度はこのことが気になり出します。そこでアーラン分布とは全くことなるサービス時間分布の場合に、上記の近似式がどの程度妥当か調べてみようと思います。


考えたサービス時間分布は

  • g(t)=\frac{1}{2}\{\delta((1-c)t_e)+\delta((1+c)t_e)\}・・・・(46)
  • ただし0{\le}c{\le}1

という離散的な分布です。サービス時間としては(1-c)t_e(1+c)t_eのいずれかの値しか取りません。そしてそれらの出現確率は等しくて1/2です。この分布は連続的な分布であるアーラン分布とは非常に異なっています。サービス時間はゼロ以上の値でなければなりませんからc_e{\le}1という条件を付けています。式(46)の分布を持つサービス時間の平均値がt_eであることは明らかです。では標準偏差\sigmaはどうでしょうか?

  • \sigma=\sqrt{\frac{1}{2}[\{(1-c)t_e-t_e\}^2+\{(1+c)t_e-t_e\}^2]}=\sqrt{\frac{1}{2}[(-ct_e)^2+(ct_e)^2]}
    • =\sqrt{c^2t_e^2}=ct_e

となります。よってサービス時間の変動係数c_e

  • c_e=\frac{\sigma}{t_e}=\frac{ct_e}{t_e}=c

よってcc_eそのものです。そこで式(46)を以下のように書き直します。

  • g(t)=\frac{1}{2}\{\delta((1-c_e)t_e)+\delta((1+c_e)t_e)\}・・・・(47)
  • ただし0{\le}c_e{\le}1

この分布で式(16)を計算すると

  • A=\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{t}{t_a}\right)\left[\frac{1}{2}\{\delta((1-c_e)t_e)+\delta((1+c_e)t_e)\}\right]dt
    • =\frac{1}{2}\left[\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{t}{t_a}\right)\delta((1-c_e)t_e)dt+\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{t}{t_a}\right)\delta((1+c_e)t_e)dt\right]
    • =\frac{1}{2}\left[\exp\left(-\frac{(1-c_e)t_e}{t_a}\right)+\exp\left(-\frac{(1+c_e)t_e}{t_a}\right)\right]
    • =\frac{1}{2}[\exp(-(1-c_e)u)+\exp(-(1+c_e)u)]

よって

  • A=\frac{1}{2}[\exp(-(1-c_e)u)+\exp(-(1+c_e)u)]・・・・(48)

となります。これを「M/G/1/2待ち行列(1)」の

  • p(0)=\frac{A}{A+u}・・・・(9)
  • p(1)=\frac{1-A}{A+u}・・・・(11)
  • p(2)=1-\frac{1}{A+u}・・・・(12)

に代入して定常状態確率分布を求めることが出来ます。


ではc_eを特定して、その時の定常状態確率分布を式(43)(44)(45)で求めた場合と(48)(9)(11)(12)で求めた場合を比較します。