「ロットサイズ縮小によるサイクルタイム短縮の可能性について」再考

ロットサイズ縮小によるサイクルタイム短縮の可能性について」で述べたことは、

  • ロットサイズを縮小してサイクルタイムを小さくするのを妨げているのは
    • 搬送時間とセットアップ時間

とまとめることが可能ですが、「枚葉装置モデルにおけるロードポートネック」で述べた結論は、ロットサイズを縮小してサイクルタイムを小さくすることを妨げているもうひとつの要素としてロードポートネックが存在することを示しています。よって、半導体ファブにおけるサイクルタイムの画期的な短縮を目指すならば、

  • 搬送システム
  • セットアップ時間(段取り時間)
  • ロードポートネック

の3つについて画期的なソリューションを見つけていかなければならない、ということになります。

  • さてここで、ロードポートネックの現象によって、ロットサイズの減少とともにキュー時間がどのように増加していくかを数式で表すことが出来ればいいのですが、今のところ私にとってそれは難問です。おそらく枚葉装置モデルにおけるロードポートネックの判定式
    • CET+pN(LP-1)Spの大小関係
  • から、S
    • \frac{CET+pN}{(LP-1)p}
  • に近づくにつれて非線形的に急速にキュー時間が増加し
    • S=\frac{CET+pN}{(LP-1)p}
  • の時に、キュー時間が無限大になるものと予測しています。

Carrier Integrityからの脱却

上で、半導体ファブにおけるサイクルタイムの画期的な短縮を目指すならば、

  • 搬送システム
  • セットアップ時間(段取り時間)
  • ロードポートネック

の3つについて画期的なソリューションを見つけていかなければならない

と書きましたが、このうち「ロードポートネック」を解消する潜在的ソリューションについて述べます。それは「Carrier Integrityからの脱却」です。「Carrier Integrity」とは「ユニカセット」とも呼ばれますが、「半導体ファブ内での物流構成」で述べたように

  • FOUPを出て装置での処理や測定を終えたウェハは、同じFOUPに戻ってくる。

というものです。これがロードポートネックの大きな前提になっていることは明らかです。特に「枚葉装置モデルにおけるロードポートネック」で

  • N>(LP-1)S ならば、いかにCETを短くしてもロードポートネックを避けることが出来ません。

と書いたように、搬送システムとは無関係にロードポートネックを避けられないのであれば、ウェハが処理後に同じFOUPに戻る、という現状の運用(Carrier Integrity)を考え直す必要がありそうです。Carrier Integrityは物事を単純化することによって、300mm半導体ファブの自動化を推進する上で非常に効果のあった運用ルールです。そして、現在の自動化システムやファブの運用方法がCarrier Integrityを前提にしているので、これから脱却するためには議論すべきことがたくさん存在していることを私は認識しております。しかし、Carrier Integrityが提唱されて8年が過ぎているので、そろそろ見直しをしてもよい頃だと考えています。