バーコフの個別エルゴード定理 記述2(その3)

バーコフの個別エルゴード定理 記述2(その2)」では、a=0.1としたところ「測度可遷的」にはなりませんでした。反省してみるに、0.1という整数倍すれば1になるような数を採用したことがマズかった、と思い当たりました。そこで今度はa=0.3にしてみることにしました。これならば、1を0.3で割っても割り切れません。
ところがa=0.3としても「バーコフの個別エルゴード定理 記述2(その2)」で考えた集合はこの変換T_1によって不変になってしまいます。


そこで、また反省しました。aの値として有理数を採用すると、それはm/nmnはともに整数、の形に書き表せます。すると、1/n間隔で並んだ点はこの変換で互に変換されることが分かります。よって、0から1/n毎に点をとり、それらを始点とする長さ1/2nの線分をn個作ると、これらの線分を構成する点は変換T_1によって必ずこれらの線分を構成するどれか別の点に変換されます。これらの線分からなる点集合の測度は1/2n{\times}n=1/2ですので、変換T_1は測度が0でも1でもないような点xのある集合を不変することになります。つまり、「測度可遷的」ではないことになります。


ということは、aの値として無理数を採用しなければならなかったわけです。こうするとある点を選択して、それに繰り返し変換T_1を行うと、結局は線分[0,1]の内部をびっしり埋め尽くすことがイメージ出来ます。

  • しかし変換を無限に行ってもそれは可算無限個\aleph_0の点しか生成しないので、それらの点からなる集合の測度は0になるはずです。ですから本当は「びっしり」埋め尽くすわけではありません。


バーコフの個別エルゴード定理 記述3」に続きます。